修業

50歳を過ぎて、新たな道を求め、修行することは、辛いものだ。パン屋をやるためには乗り越えなければならないいくつかの試練がある。一つは早起き。次に立ち仕事に慣れること。そして長時間労働。大阪門真市の元職場近くにあった夫婦二人でやっているパン屋さんにちょくちょく行った。そのパン屋さんは朝の4時から仕事に入り、営業は夜の8時まで、片づけて9時に帰る。懸命に働き続ける二人の姿に怖れにも似た感動を受けたことを覚えている。私の修業したパン屋「あこ庵」の初日は、朝4時からスタートし、終わりが7時半だった。一日目で自信をなくしたことが思い出されるが、同時にそんな労働を日々続けているパン職人さんへの敬意も感じざるを得なかった。長年生きていると、知らず知らずに、プライドが蓄積し、狭い自身の生活場での「常識」がすべてだと勘違いしてしまう。年をとっての修業は、まずは「自分壊し」ができないと、前に進めない。(写真は2回目の修業先「ナチュラル・プクー」)