新しい年を迎えて

「夢」という言葉を意識する出来事がいくつかありました。

よくお見えになる画家さんが新作の、かのこカスクを食べながらふと口にしました。
「このパンは他のパンと違うおいしさを持っている。」
何か意味深い印象の話しぶりに、私は興味を惹かれました。
画家さんは、若いころよりフランスなど外国で生活され、数々の有名な賞も受賞されたお方です。いまだに、衰えぬ制作意欲をもち、謙虚で前向きな姿勢、発する言葉の的確さと深い意味・・・。尊敬の念が、無意識に浮かんできます。
そんな言葉に続けて
「パン屋は寿司屋や牛丼屋などと違う。日本ではないヨーロッパの文化を感じさせる。店に来るお客さんは、行ったことのない、見知らぬヨーロッパへの夢をパンに投影するのよ。」
日頃より「安全・安心・うまい・低価格」の視点でパンを見続けてきた私とは全く違う切り口。一瞬電気のような衝撃が体を突き抜けました。

パン屋開業の時、どうしても譲れなかったパイローラー購入。デニッシュペストリーが作りたかったのです。そのために必要なパイローラーとエアコン付きのパイルーム。昔よりパン屋の前を通る時の「甘~いデニッシュの香り!」に憧れました。私は、「デニッシュにはロマンがある!」と本能的に感じ、体にはあまり良くないとわかりながらも(高カロリー)デニッシュのあるパン屋さんが作りたかった。
その私の気持ちを、見事に説明づけてくれたわけです。
なるほど、「子どもに人気のあるパン屋やケーキ屋」というのもうなづけます。

私のいとこが豊後高田市で写真スタジオをやっています。その彼が、オニパンカフェの写真アルバムを作ってプレゼントしてくれました。その表紙に「夢をつづるパン屋さん」と印字されていました。
写真はとても気に入りました。それで、このホームページのトップに使ってきました。しかし、この「夢をつづるパン屋さん」というタイトルがとても恥ずかしく、こそっと、お店においている。
でも、このことも画家さんの言葉がきっかけで、私なりにわかってきました。彼は、オニパンカフェに夢をいだき、自分のスタジオもそんなお店にしたいと思ってくれている。そんな、いとこの思いや姿勢に私も共感し、嬉しく感じることができました。
(上、左の写真は、彼が撮ってれた写真です)

「夢を投影する」っていう言葉、とても素敵です。
私たちは、必ずしも、万全で、安定した境遇で暮らしているわけではありません。
お金、愛情、仕事、健康・・・(私も含め)色々とうまくいかない不安定な状況が常なのかもしれません。
でもささやかに、夢を抱くことは、平等であり・・・・
そんな人たちに投影されるような夢を生み出すパンやお店を作れたら・・・・

具体のない夢は実現できません。
日々、一つ一つを大切にしたパン作り、お店づくりを、今年はがんばろう!
っと、思った新年です。

今年もよろしくお願いいたします。