酵母生活

塚原の冬はいい!枯れた冬景色。「枯れる」という言葉の意味には「深みが出る」という意味もある。春を前にして、目に見えない深いところで、命が活動している。静かで澄み切った大気。夜の星空がいい。
オニパンカフェは、冬季、週三日お休み。その時間を使って、人間らしい生活を試みる。チェーンソウを使い木を玉切りする。ハスクバーナーの斧で薪割り。薪ストーブの暖で音楽と読書。夏場がウソのようなほっとするひと時だ。
疲れた体を癒していると、ふつふつと考え(アイデア)が目覚めてくるようだ。私の場合、朝方ベッドの中で、夢見ごこちの時、突然やって来る。新作の「かのこカスク」の成形もそうだった。そして、酵母づくりも。
あこ酵母の秘密を解き明かしたい!と常々思ってきた。自分で酵母作りからできれば、これぞ胸を張って「手づくりのオニパンだ!」と言える。
あこ酵母の生種を味見すると、甘酒のようなおいしさだ。これは酒種と関係があると直感的に思う。原材料は「米・小麦・麹」とあるので、たぶん正解のはず。酒種から元種をつくってみようと試みた。これでうまくパンが焼けるのか。

つくり酒屋から米麹を取り寄せ、塚原レストラン12の月の女将さんから頂いたもち米で甘酒をつくった。その甘酒に同量の水を加え、30度の温度で3日間発酵させた。


3日後。シュワシュワと泡立つ酒種ができた。
それにオニパンで使っている食パン用の小麦粉を混ぜ、元種をつくった。

これを3度繰り返し、3番種をつくって、パン作りを試みた。

ぶどう食パン。右はあこ酵母。左は自家製酵母。固くて重い!う~ん。なぜ?原因は色々と考えられる。発酵力か弱いのか?それとも過発酵か?一つ一つ課題を設定し、確かめて行かねば原因はわからない。
私は発酵力が弱いとは思わなかった。弱くても、ある程度の時間をかければ、酵母は増殖し、力が増していくはず。それよりも、酵母の数が多すぎ、それに足るだけの餌が足りずに、酵母が死んでいったのではと考えた。それで、今度は元種の量を半分にし、またパンを焼いてみた。

嬉しかったですねえ。予想は当たっていました。窯伸びもして、かなり大きく育ってくれました。手前の食パンが自家製酵母のもの。後ろの袋に入っているものがあこ酵母の食パン。お客様が興味を示して、「売ってください」と言うので安くお売りしたが、まだ商品としてお店に並べるほど質の高いものではない。しかし、味もなかなか良くて、しっとり感とボリュームが出ればそのうちお店に登場という日が来るのではと、密かに思っている。
酵母の名前まで今考えているところ。「オニパン・塚原酵母」ではどうだろうか。塚原のお水、塚原に住む空気中の自然酵母が営み生み出す種からできたパン。夢があっていいなあと思う。
うまくいくのかなあ。