別れ

イギリスからやってきたタツくんとフランさんが今朝オニパンカフェから旅立ちました。9日間の滞在でしたが、私たちにとってとても刺激的であり、また楽しく有意義なひと時を二人は運んできてくれました。若いにもかかわらず、二人はよく動き気遣いもできる若者でした。お店でも良く働いてくれました。湯布院の知人から聞いていたウーハーという制度。それは、NPOで宿泊と食事の提供を受ける場合、一日6時間働くことが条件だそうです。私は、タツくんとフランさんにそのことを告げました。二人は、それ以上の働きをしてくれました。一昨日は二人がスパゲッティパーティを準備してくれました。私たちに「何もしなくていいですから、お風呂に入ってゆっくりしてください」と告げ、自分たちは夕食作り。テーブルに並んだ3種のスパゲッティのおいしかったこと。片付けも全部やってくれました。私たちのようなお店商売をしている者にとって、一番嬉しいことは、労働の軽減。食事の世話まで面倒を見ることは正直言って余裕がない状況です。人のお世話になる時は、相手に負担のかからないよう気遣いをし配慮できるようにしなければと逆に若い二人から学びました。今朝、4人で記念写真を撮り、お別れをする時は何かとてもさびしい気分になりました。

 

 

来客

この一週間オニパンカフェは賑やかしい日々となりました。7月12日(日)に、大阪より3人の友人が訪ねてきて、久しぶりに昔の話に花を咲かせました。同日、京都より娘が帰ってきて、6人で夜を過ごすことに。11時過ぎまで起きていて翌朝4時からの仕事は辛いものがあります。月曜日はふらふら状態。しかし、そこはお手伝いのケイちゃんがいてくれてとても助かりました。大阪の3人が帰って入れ違いにイギリスからタツくんと彼の彼女のフランさんがやってきました。タツくんは大阪の友人の息子で、23歳。昨年もオニパンカフェに何と折りたたみ式のミニサイクルでやってきて数日間泊まり、さらに鹿児島までそのミニサイクルで行ったというツワモノ。イギリスで彫刻の勉強をしています。今回は、可愛い彼女を連れて、お気に入りの塚原へやって来ました。英語にはあまり関心のないママは聞き役で、急きょオニパンカフェは英会話教室に変身。タツくんは3年もイギリスに居てるというだけあってさすがペラペラ。私はほとんど二人の会話が聞き取れず、ブロークンで何とか会話に参加。それにしても、若いフランさんですが、自立していますよね。ヨーロッパの人は自己愛が強く、まず自分が第一みたいです。周りに気を使い、周りからの評価を気にして生きている日本人との違いを強く感じます。知らない人の中に入っても、ごく自然に自分を表現しているフランさん。タツくんもそんなタイプなのか、こんな二人なら、どこででも暮らして行けるんだろうなと思いました。昨年うちにやってきてタツくんの性格を知ったママは、彼が大のお気に入りです。タツくんはイギリスに帰ってからも、ほんと丁寧な手紙を送ってきたり、メールをくれていました。ママは、嬉しそうにタツくんとやり取りをしていました。タツくんはママが好きな紅茶をわざわざイギリスから送ってきてくれたりもしました。今回、うちにお泊りするにあたって、お土産として、とてもレアな紅茶を持ってきてくれました。フランさんの住んでいるノースイングランドにある紅茶専門店がブレンドした紅茶(缶がとてもかわいい)など、日本では手に入らないものをいくつか持ってきてくれました。早速カフェで使いたいと思います。

私はよくわかりませんが、紅茶にもいろいろな種類があるんですね。イギリスでは、紅茶が生活になくてはならないものなのだそうです。

「Bettys tea room」のブレンド紅茶。ノースイングランドではとても有名な紅茶専門店だそうです。缶が素敵で、うち蓋があるんです。日本のお茶の包みたい。

パン屋の楽しみ

パン屋はハードな仕事です。毎日ほぼ16時間は働いています。労働基準法を持ってこられたら、パン屋は一発で「指導」が入れられる職種だと思います。(労働基準局に誰か訴えてほしいなあ)なんて思いながら、働いています。ハードさだけ強調すると誰もパン屋にならないでしょう。でも私はパン屋になって良かったと思っています。パン屋の喜びは様々ありますが、最近私が楽しいと思うことを紹介します。「おいしいパンを作りたい!」と常日頃から思っていると、不思議といろいろアイデアが生まれてきます。毎日のパン製造の作業の中で注意深く生地の変化や仕上がりの状況を見ていると気がつくこともいろいろと出てきます。それらを頭の中の引き出しにストックしておきます。こんなパンを作ってみたいなあと思って試してみます。ほとんど失敗します。しかし、それも引き出しにストックしておきます。そして黙々と日々労働にいそしむのです。その日は突然にやってきます。私の場合は寝ているとき夢に出てきたり、朝起きてちょっとして「こうやれば、うまくいくかも」ってな風に、アイデアがひらめきます。あるいは、製造の作業中にひらめくこともあります。そんな時は大変です。試してみたい衝動が脳みそ中を駆け巡り、開店準備の忙しい中、(がまんしたら、体に悪い。やったれ)と開き直り、試作に入りこみます。「うめパン」はすでに3回失敗。現在も思索中。クリームチーズフランスは、最近のヒット作(自分の中で)。これはいけるぞと思い、あふるる期待感をもって、しかし決して表情には出さず仕上がったパンをカウンターに並べます。「これうまいはずですよ~」と控えめにお客様に声をかけます。怪訝そうに一本買ったお客様。帰られてしばらくしてやってきました。「車の中で食べたらうまかったので、もう一本ください。」私は(やったあ)と心で叫びます。そして最近電話で予約注文がはいりました。「クリームチーズフランス5本ください」。初めてのご指名。立派に成長したクリームチーズフランス。そのひとり立ちの日を親にも似た気分で喜びを味わいます。今日も朝、突然アイデアが天から降ってきました。きなこツイスト。これも以前2度ほど試作してうまくいかなかったものです。さてどうなるやら。

何度も出てきてすみません。シナモンカレンズ。別名「おっぱいパン」これは形がなかなか定まらず結果としてこんな成形にしました。これが結構面白い形なので別名をつけたくなります。帽子のようで「帽子パン」かな・・・。おっぱいに似てたのですが私の口からそれを言うのははずかしかった。ある時、製造を手伝っているカズコさんが、「おっぱいパン」と簡単に言い切るので私も口にすることができました。

 

こんなに手間暇かけて作られるクリームチーズフランスはないのではと思います。そのおかげで、外はパリッと、中はモチっと。一日10本が限度かな。食べごろはまだ余熱が残っているころ。一日経ったらクリームチーズを出して、オーブンで温め、またチーズを入れて食べてみてください

一周年

6月28日に一周年を迎えました。いろんな方からお祝いの言葉やプレゼントをいただきました。オニパンカフェに寄せる期待や思いをひしひしと感じています。オープンは派手にやりました。自分の人生の中でも最大のショーのような感じでした。一周年は、静かに静かにやりました。ちょっと1割サービスをしただけで、何の企画もイベントもなく。静かな中に見えてくるものこそ実体。自らも忙しいはずなのに、他人の一周年に、時間を割いてお祝いをすることの意味を、私たちは深く受け止めねばと思っています。人生の本質はシンプルでクリアー(かな?)。思いの丈ほど、相手に伝わる。相手のことを思えば、必ずやいつかは伝わる。相手のことを思って、丁寧に心をこめて作れば、お客様にもわかっていただけるはず。ちょっと波もあるけれど、基本その姿勢でがんばってきました。一周年はそんな私たちへのプレゼントだと思います。しかし、今から考えると、危なっかしい開店当初の状況でしたね。やっとパン屋らしくなってきたっていうところか。まだまだですけどね。(写真は塚原在住のアイリッシュハープ演奏者生山さんの友情演奏)

近所の方が突然ワイン持ちよりでお祝いに来てくれました。

奥の方で演奏されてる方が生山さんです。オニパンでは朝一番は生山さんのハープのCDを流しています。

 

 

出会い

うちにお手伝いに来てくれているケイちゃんが「マスター、人の出会いって大切っすよね」と言っていた。私も同感。お店をやっているといろんな人との関わりからそう思うことも多いが、最近あったことをちょっと紹介しておきます。大阪時代にかかわった若い知り合いが大分で働いている。3か月前にフラッとオニパンカフェに現れました。彼女は大学を出て、立派な企業で働いているものの、ノルマに追われ営業成績の追求オンリーで心身ともに疲れているようでした。子どもの頃から頑張り屋で、大学も働きながら卒業し、すべてにおいて自活しようと、その心意気にはすごみさえ感じていました。私はそんな彼女のことが気にかかって、何とか連絡を取ろうと試みましたが、うまく連絡が取れずに3か月が過ぎていました。ゆったりとした自然に抱かれ、この塚原でちょっと一晩でもゆっくりしたらと考えていました。そんな折、彼女はまたフラッと現れました。今回は、同年齢の優しそうな男子をつれて。表情も明るい。3人でお話をしていると、二人はその業界の売上競争について、かなりまいっているようで「だましてまで・・・」と本音を吐露していました。人が生きていくことはつらいく厳しい。私は、大変だと感じながら、「人間らしさを守っていくために、染まらないで・・・」ということがせいぜい。彼女は突然私に向かい、「前の仕事と今のパン屋くらべてどうですか?」と聞かれました。「前の仕事は悩みも多かったけど、感動も大きかった、とても意味のある仕事だった!」と答えると、彼女は「私、今から、それを目指そうと思います」としっかり言い切るわけです。彼女は24歳。まだまだこれから。自分の人生を真摯に切り開こうとしている姿に、私は胸が熱くなりました。(写真はシナモンカレンズ(おっぱいのように盛り上がっているときはおいしさの証明。下はフルーツデニッシュ。フィリングにちょっとこだわっています。本文と写真は関係ありませんから。)