パン屋の楽しみ

パン屋はハードな仕事です。毎日ほぼ16時間は働いています。労働基準法を持ってこられたら、パン屋は一発で「指導」が入れられる職種だと思います。(労働基準局に誰か訴えてほしいなあ)なんて思いながら、働いています。ハードさだけ強調すると誰もパン屋にならないでしょう。でも私はパン屋になって良かったと思っています。パン屋の喜びは様々ありますが、最近私が楽しいと思うことを紹介します。「おいしいパンを作りたい!」と常日頃から思っていると、不思議といろいろアイデアが生まれてきます。毎日のパン製造の作業の中で注意深く生地の変化や仕上がりの状況を見ていると気がつくこともいろいろと出てきます。それらを頭の中の引き出しにストックしておきます。こんなパンを作ってみたいなあと思って試してみます。ほとんど失敗します。しかし、それも引き出しにストックしておきます。そして黙々と日々労働にいそしむのです。その日は突然にやってきます。私の場合は寝ているとき夢に出てきたり、朝起きてちょっとして「こうやれば、うまくいくかも」ってな風に、アイデアがひらめきます。あるいは、製造の作業中にひらめくこともあります。そんな時は大変です。試してみたい衝動が脳みそ中を駆け巡り、開店準備の忙しい中、(がまんしたら、体に悪い。やったれ)と開き直り、試作に入りこみます。「うめパン」はすでに3回失敗。現在も思索中。クリームチーズフランスは、最近のヒット作(自分の中で)。これはいけるぞと思い、あふるる期待感をもって、しかし決して表情には出さず仕上がったパンをカウンターに並べます。「これうまいはずですよ~」と控えめにお客様に声をかけます。怪訝そうに一本買ったお客様。帰られてしばらくしてやってきました。「車の中で食べたらうまかったので、もう一本ください。」私は(やったあ)と心で叫びます。そして最近電話で予約注文がはいりました。「クリームチーズフランス5本ください」。初めてのご指名。立派に成長したクリームチーズフランス。そのひとり立ちの日を親にも似た気分で喜びを味わいます。今日も朝、突然アイデアが天から降ってきました。きなこツイスト。これも以前2度ほど試作してうまくいかなかったものです。さてどうなるやら。

何度も出てきてすみません。シナモンカレンズ。別名「おっぱいパン」これは形がなかなか定まらず結果としてこんな成形にしました。これが結構面白い形なので別名をつけたくなります。帽子のようで「帽子パン」かな・・・。おっぱいに似てたのですが私の口からそれを言うのははずかしかった。ある時、製造を手伝っているカズコさんが、「おっぱいパン」と簡単に言い切るので私も口にすることができました。

 

こんなに手間暇かけて作られるクリームチーズフランスはないのではと思います。そのおかげで、外はパリッと、中はモチっと。一日10本が限度かな。食べごろはまだ余熱が残っているころ。一日経ったらクリームチーズを出して、オーブンで温め、またチーズを入れて食べてみてください