古き良きものも・・・

ついに…予想していたものの、残念でもあります。近ごろオニパンの象徴的インテリアである柱時計が調子を崩しつつある。東京多摩区でパン屋修行をしていた14年前に居酒屋「かどかど」のマスターからいただいた柱時計。

オニパン開店時より頑張っていた柱時計、でも途中一度修理に出したことがある。吉田時計店さんへ。ご主人は88歳の時計職人。修理に出したら、したの壊れた部分の木の補修もしていただいた。職人気質のご主人とは年賀状のやり取りをしていたが、一昨年に突然亡くなられた。死ぬまで時計修理をされていたと奥様がおっしゃっていた。

「かどかど」のマスターは、大病で危ないと言われていたが、2年前に年賀状が届き「まだ生きている」との知らせ。少年時代は相当の悪で新聞にも載ったと自慢していた。弱気になり疲れ果てた(修行で)私をはげまし、行くたびに新しい新作の料理とかを出してくれた。「迷うときは動くな」という言葉を自分の体験から諭してくれた。この古時計を見るたびに、東京での思い出が浮かび上がってくる。

古き良きものもいずれは交代の時期が来るのだろう。出なければ、新しい時代はやってこない。

これが新しい時代の柱時計。ちょっと安っぽい。電波時計なので狂わないし、らくちんだ。便利な時代にふさわしい。

古時計は、週に一度以上ゼンマイを巻かねばならなかった。狂いも調整した。手間がかかる。新しい時計はそんな必要がない。便利だ。

きっと手をかけるほどに、そのものへの思いが蓄積されていくのだろうな。古きものは、そんなものなのだろう。