オニパン 新しいスタイルの考察

不眠症に陥っていた私。半年以上は続いてきた。悩み?ない! 年かも。多分そう。若いころは、悩みも多かった。しかし、眠る体力もあった。けれど、年だけではないと最近思い出した。いつも頭の中に、あれやこれやの課題が頭をもたげてくる。脳が活動しすぎ状態になっているのでは・・・。

オニパンの直面する課題を意識しだしたのは2,3年前からか。これは、オニパンだけに言える課題ではなく、パン屋共通の課題でもある。それは、長時間労働と経営の難しさ。経営とは収益面の事。パン屋を始めてず~っとその課題に明け暮れてきた。パンを作る喜び、お客様に喜んでもらえる幸せ、そんな人間的な充実感があるから続けられるのであって、長時間労働・低賃金とくれば、確実に嫌がられる職種のひとつだといえよう。

オニパンは愛されていると感じる今日この頃。9年近く続けられているのは、そんなお客様の支えあってこそ。お客様の笑顔・期待に応えたくて、日々パンの研究にいそしんできた。近頃は、美味しいパンを焼くことができると自信も出てきた。年にもかかわらず、まだまだ創造的心も衰えていない。リピーターの方から、ほそくでいいから長く続けて欲しいといわれる。なくなると寂しいと言われる。ありがたい。心の片隅にでも「オニパン」の存在が、その人のささやかな幸せに貢献できていると思えば、「80歳までやってやろうぜ」と思ってくる。

しかし確実に言えることは、このままではオニパンは続かないということ。縮小して、少ない製造量に切り替えれば、続けることもできよう。しかし、今はそんなことは考えられない。たくさんのお客さま、そして求められるパンの質、支えてくれているスタッフの生活、地域・観光に対する貢献、その他諸々の要素が増してきたからだ。

この折々帳を読んでくれる読者は、大方オニパンのサポーターだと思っている。毎日70~100人近くの方が訪れてくれる。その方々には、私は常に本音で、等身大で、つまらないことも含め折々帳を綴ってきた。まずはサポーター読者の方々に、新しいオニパンスタイルについて、ご理解ご協力を願いたく、この間考えてきたことを報告したい。

スタッフの労働時間が気になる。いくら若いからと言って、5時から~5時過ぎの労働時間は長い。まじめな二人は、私が用意する粗末な朝ごはんをなかなか食べてくれない。座って食べるわけでもないのに、仕事に追われてか、あまり食べない。下手をするとお昼ご飯を食べる1時ごろまで(すでに働き出して8時間経過)食べずに、休みなく働き続ける。飲食の仕事をしたことがない人には、考えられない過密な労働だ。ほぼ無駄口をたたくこともなく、一秒たりとも動きを止めず、機敏に動き続ける。もちろん座ることなんてない。8時間続けるのは地獄だといえる。そして、昼ごはんは30分程度。その間もお客さんは来る。一応休憩時間をとる。しかし、仕込みなどがあったりお客が多い日曜日など休憩もとらない(休憩は一応30分)。そして、2時ごろより次の日の生地の仕込みが始まる。お店閉店が4時半。片付けと、翌日の具材の補充などで5時半から6時近く。昼ごはん後4時間。計12時間以上。私は、初めてパン屋で修行した時4時から7時過ぎまで働いた。休憩1時間をひいて14時間労働。そんな日が続いた。フルマラソンを走る経験があったにもかかわらず、辛く苦しい日々。3か月くらいすると、体が慣れてきた。しかし、休みの日は体がしんどくて、なかなか趣味の時間に費やすのはむずかしかった。長時間労働は人間性をむしばむと肌で感じた。せっかく開店したパン屋をつぶしてはならないと、3年間夢中で頑張った。14時間労働を続けた。しかし、体が持たない。せめて12時間だと嬉しいなと、スタッフを増員。そして5年近くになって、正社員を雇う。ひろちゃんだ。ひろちゃんも良く頑張ってくれた。4時から勤務。そして5時ずぎ迄。一年と少しで退社。その後を引き継いでくれたのが清家さん。彼女が働き出して、しばらくして山本君も入社。二人体制でいくことに。この二人体制は今のオニパンにとって必要不可欠の体制だ。パンの製造量の確保と私たち二人(マスターとママ)の労働時間の関係から。二人体制になるまでは、私は座って朝ごはんを食べられなかった。私の場合は従業員さんよりも1時間前から仕事に入る。結構この年で、昼の1時までに9時間立ちっぱなしで労働を続けるのはつらいものがある。個人的な話はともかく、労働時間を減らすことは焦眉の課題。そのために最近始めたのが、冷蔵生地の扱い。リッチな配合の二つの生地を二日分まとめて仕込む。これで一日は仕込む生地が少なくなる。その時間を他の仕事につかえる。そして、現在私の仕事がお客様中心の対応に流れがちで、スタッフの仕事が増えている。もっと、製造中心の仕事に従事して、スタッフの負担を軽くせねばと考えている。お客様によっては、マスターは暇そうやと思っている方もおられると思う。私もお客様と話したくて、つい時間を取りすぎている。従業員二人体制に甘えてしまっていて、私がカフェにいるほどに、スタッフの労働時間が長くなっている現実をしっかり踏まえなければ・・・。ご理解を。

抜本的な改善策として考えているのが、予約制度。そして、アイテム数の減少化。オープン当初は、20数種のメニューを毎日作るのも大変で、和風パンの日、欧風パンの日と曜日で変えて、作るメニューを少なくしていた。現在は45種類ほど毎日作っているが、それが大変。30種類ほどにして、欲しいパンがあれば、前日に予約するというシステムにしたい。曜日ごとに出す商品を変えようと思う(人気商品は毎日作る)。

オニパンの目指す方向性として、良質な品質・味をさらに追求していく。経営の安定を求め、売れる商品をたくさん作るというやり方ではなく、お客様が納得し期待する商品をつくる。不味ければ、旨くする。より良い具材があれば(お値段も考えてだが)それに切り替える。おいしい食べ方を考えて、その方向で販売する。そして、オニパンのオリジナリティーを確立していく。ここが違うということを、消費者に明確にして販売していく。今まで、庶民の生活を考え、買いやすい価格を基本として商品開発をしてきたが、これからは良いものをお客様に提供することを基本として商品開発を考える。もちろん、できる限りの低価格を考えるが。しかし、現在のやり方では、お店自体が存立できない。そのオリジナリティーだが、考えはある。それは、6月の9周年に向けて準備をしようと思う。すべて切り替えるのは、すぐにできるかどうかわからない。得意の試作(商品開発の際何度もやって来た)で、答えを出していきたい。10周年までにはオニパンスタイルみたいな形が示せればいいなと考えている。

お店開店の思いは、ホームページの見出しにある通り。そして、多くの方に少なからず貢献できて来たなと最近思えるようになった。これも、オニパンを愛してくれているサポーター、ファンの皆様のおかげ。感謝してもしきれない。これから、さらに頑張って行く決意です。宜しくお願いします。