自転車女子 オニパンへ来訪 ~文化と人生をお土産に持って

1月22日~1月24日、楽しみにしていた訪問客がオニパンに現れた。この方、ママの大阪時代の同僚で退職後長野に移住し暮らしている。名前は以登江さん。私も大阪時代から知ってはいたが、パン屋を始めてから親しくなったといってもいい。オニパンファンの方ならご存じだとは思うが、冬季限定の人気商品「網リンゴ」。そのリンゴを毎年送っていただいている女性。いわば、オニパンを支えてくれている方だ。その以登江さんが、用事あってこちらに来るついでに、オニパンにも寄るということになった。

気さくで気を使わせない生来の性格を持つ(?)以登江さんは、反対に相手に対しては気配りができる方で、忙しいパン屋へ3日間滞在するということから、食事係を申し出た。なんと、ありがたいことに、22日と23日は信州の郷土料理をふるまうという。うれしい!ママは、そのことが一番うれしかったようだ。以登江さんは、その材料を前もって宅急便で送って来た。さて何を食べさせてくれるのか。私もわくわくしてくる。KIMG0737[1]

 

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毎年取り組んで、なかなかうまくいってない干し柿。彼女は見事に白い粉をふかせて上手につくっている。干してから、箱に入れておくとこうなるとか。そして、楽しみの夕食の時間がやって来た。出ましたねえ。ずらずらと。

KIMG0741[1]料理写真の前に少し説明を。長野は土地柄か(?)以前より缶詰をよく料理に使うそうだ。チラッと見えている鯖缶などは必需品らしい。そして、ビンに入っているものはいろんな野菜の漬物。袋には変わった豆。雪国では保存できるような食材を使った料理が多いのだろうな。KIMG0742[1]
KIMG0743[1]さて、出ましたよ。お椀の中には「タケノコ汁」うめ~!!タケノコの触感いいですねえ。ヒメタケ?このタケノコ汁に漂うサバの風味。これがないとお汁は成立しないとのこと。次の写真で、舌をひいたものは、大きな豆。これは、豆そのものが和菓子のような出来栄え。これは、クリだ。柔らかく上品な味わい。デニッシュの上に載せて、「マロンデニッシュ」って言っても、だれも疑わないKIMG0746[1]ささずし。これもうまい!笹がとてもきれい。冷凍していたらいつでも使えるそうで。次はお酒のアテになるような、サバに大根おろし、醤油。お酒も進みました。

KIMG0750[1]住むところが違えば、当然そこに営まれる生活や歴史も違う。食もこんなに違ってくる。狭い日本といっても、こんなに違う。いいですね文化の違い。楽しいですねえ。

以登江さんが3日もオニパンに滞在するのは、それなりの理由があった。最愛のご主人を長野に放っておいてまで、どうしても、しておかねばならない仕事があった。それは、オニパンの定休日に私たちと一緒に、ある場所に訪れたかったからだ。

以登江さんはリンゴを毎年送ってくれる。本人が栽培しているわけではない。親戚や知り合いのリンゴ農家さんから分けてもらい、郵便局へ運んでくれる。重たいリンゴの箱。どうやって。車で運んでると思ったら、実は自転車で。彼女は運転免許を持っていない。若いころから、どこへ行くのにも自転車で。坂であろうが、でこぼこ道であろうが。そのうちに、自転車の魅力に気付いたみたいだ。数年前送ってきた年賀状に愛車5台とともに嬉しそうに写っていたと、ママが言っていた。そんな彼女が、ふと読んだ「折々帳」。そこに、私がひーひーで登った、サイクリストの聖地「銭亀」の文章があった。彼女はその「銭亀」に心取られたのだろう。きっと、自転車に乗るたびに、この坂、銭亀とどれくらい違うのだろう、などと想像しながらペダルをこぐ。長い坂があれば、挑戦したくなる。もっともっと登ってみたい。愛読書の「弱虫ペダル」で知った、ダンシング。ダンシングも練習するうち20分以上続けることができるようになった。彼女はママより一つ上。ということは64歳。64歳の自転車女子は、いつしか「銭亀」に登ることが夢になっていた。

機は熟していた。しかし考えてみれば、彼女の乗る自転車はどうしよう。まさか、ママの自転車で?お子様用みたいなクロスバイクじゃあ無理だ。オニパンによく来るサイクリストさんに相談した。連絡を取り合って、素敵なクロスバイクを貸してくれることになった。そして伴走する私のために、誕生日プレゼント(1月なのです)を兼ねて、これもいろんな方がたが持ち寄ったパーツを組み立て、立派な立派なロードバイクを持ってきてくれた。それも気を利かして、練習ができるように、早めにプレゼント。ロードバイクなど乗ったことのない私は、サイクリストの皆さんの思いを背に、1回目は前回の折々帳でも書いたように、別府下り・ミョウバン温泉ビールうどん付きトレーニング、そして2回目は東別府方面から銭亀を目指す4.8キロのきつい上りトレーニングを敢行。ちょっと話はそれたが、そんな温かなフォローのおかげで、以登江さんの「銭亀の夢」は、実現することになった。

DSCN43481月24日。寒いが、なんとか天気も回復。全国的な寒波・雪も、彼女の熱い思いで、この地までやって来れなかったようだ。初お目見えの以登江さん、64歳自転車女子。さすが、自転車乗り。鍛えられた体のよう。「私、きつかったら何度でも足をつけるよ。ただ、ここにきて、サイクリストの聖地に立てるだけで幸せ。」

DSCN4351デンケンスタート、12:05。最初のきつい坂もこんなふうにグイグイ登っていく。後ろから見ていると、若いスポーツ女子に見えてくる。やはり普通のおばちゃん(ばあちゃんというのには一年早いか)ではない。

DSCN4352初めて乗るクロスバイクの操作の仕方を間違えて、重いギアへ。そこで足をついてしまう彼女。私の方も必死なので、助けることもせず、追い抜く。

DSCN4355そのまま、私は峠を目指し踏ん張る。DSCN4362彼女も相当苦しくなってきたようだ。ゴール1キロ前くらいから、スピードが鈍る。ママが大きな声で「頑張って~、あともう少しよ~!」励ます。そして、そして、ついに「銭亀」石が・・・。

DSCN4365銭亀石の対面の道路で、持てる力を使い果たした以登江さんは、へたりこむ。「心臓がバクバク」「道路でねころがりたい」などと言いながら、感動が押し寄せてるような苦しそうな顔。

DSCN4367「銭亀石の前で写真撮らなきゃ」と呼び寄せ、記念撮影。彼女の自転車人生集大成の「銭亀」での笑顔です。写真での記録(時間)を見ると、到着は12:35分。3.8キロの上り、30分。ギアミスで一回足をついたものの、上り完走!!見事な走りっぷりでしたね以登江さん。

そこから、東別府側へ、4.8キロの爽快ツーリング。下りメインで、別府湾の広がる素晴らしい眺望。

KIMG0759[1]KIMG0770[1]KIMG0765[1]後姿からなんか喜びみたいなものが伝わってきます。

KIMG0772[1]人生に乾杯!!