リーは僅か3年足らずの生涯を、本当に楽しく色濃く意味あるものとして生き抜きました。狩りをし、人間と楽しく交流し、恋をし、存在を認められ、充実という言葉がぴったりの人生を歩みました。リーがいなくなって、写真を観たり、その行動を振り返るとき、ますますその思いが強まってきます。
リーは「看板猫」となりました。ネズミ捕りの仕事を依頼されてオニパンにやって来たのに、生来の「人好き」「フレンドリー」な性格が、リーを自然とお店の玄関先に向かわせました。来られるお客様への接待に、お客様は癒されます。「リーちゃんかわいい!」「リーちゃんまたね!」そして次回は、「リーちゃんいる」とお客様。「招き猫」そのものです。リー自身もそれがうれしくて、ママの「リー、おいで~」の呼び声に、どこからともなく駆け寄ってくるのです。「すごい!!」とお客様。
リーは、親ばかではないですが、とてもきれいな猫でした。毛が柔らかくきれいで、触ると気持ち良い長毛。しっぽが見事で、小顔。スタイルが良い猫でした。それが、看板猫としても、映える原因でした。親ばかではないですが、リーが何気なくたたずむ姿を見て、つい写真を撮りたくなるのです。猫を飼ってる人は、たぶんみんな同じ気持ちなんでしょうが。猫を飼いだして、猫を飼っている人の親ばかな気持ちがわかってきました。それでも、リーは、特にきれいだと思っています。
どうですか、見事でしょう。写真が訴えてきますよね。そのリーの美しさが証明される出来事があったのです。リーが一歳から二歳にかけて、二度も写真家が撮影に訪れたのです。その写真家は、リーをどうしても撮りたい、展覧会に出したい、と頭を下げるのです。私たち親としては、リーの美しさをプロが認めたのだと、有頂天に。リーの短い生涯で、最も輝いていたころのワンショットをお見せします。(写真家からいただいた作品)
どうですか、野良出身に見えない、美しさでしょう。
リーの調子が急変するのは、9月8日(木)です。食べられず、ぐったりと一日中寝たきりのような状態で過ごします。大変だと動物病院へ行き、注射を3本し、様子を見ました。さらに翌日注射を3本。状況は改善されず、このままでは2~3日の命だと判断。私たちも、覚悟を決めるしかないと、決意します。最後にリーの生涯について、触れておかなければならない二つのことを記します。
サリー姉ちゃんのこと
リーは、人好きな猫でした。しかし交流は人だけではありませんでした。リーは一年位前より、近所の(といっても、森を越えた向こう側のお家の)生山さんとこのサリーというお姉さん猫が大好きになったようです。サリーはおとなしい猫であり、リーもまた穏やかな猫でした。毎日のように、サリーのお家へ行っているようでした。リーは去勢していて、サリーのもとへ行っても、ただ一緒に座っているだけの関係。しかしリーにとっては一番幸せなひと時だったと思います。そう思ったのは、最近になって(リーが亡くなってから特に)生山さんが送っていただいた写真などから、確信を深めました。
生山さんは、サリーとリーの楽しそうなふれあいの一コマをカメラに収めてくれてました。リーがいなくなって初めて見るリーの姿に、瞼が熱くなります。黙っていても、リーの声が聞こえてきそうです。生山さんは、リーが亡くなって、わざわざリーのためにブログを書いてくれました。その中に出てくるサリーとリーの写真がこれです。
こんな風に一定の距離を取っていつも二人は座っていたのでしょう。でもそれだけでもリーにとっては満足のひと時だったでしょう。
こんなに大好きな、サリー姉ちゃんに、リーは2か月ほど会いに行きませんでした。生山さんがパンを買いに来るたびに報告してくれるのです。「ず~とリーちゃん来てないですよ。」それには理由がありました。サリーとお付き合いしたい猫が他にも現れたからです。クロという猫です。クロはとてもタフで強い(体はりーより小さいのですが)猫です。我が家にもたびたび現れ、リーとけんかもしました。リーはクロにかなわず、クロを怖がるようになりました。クロはオニパンの敷地もテリトリーに加え、リーはオニパンの敷地内でもひっそりと行動するようになりました。以前のような、我が物顔のリーの姿(自分が大将みたいな)がまったく見られません。状況が急変する9月8日の一月以上前より、なんとなく元気がない様子でしたが、それが病気だったのか、サリーと会えなくなったからかははっきりしませんが。
症状が急変する9月8日。その前日のことです。目の覚めるようなリーの変化が。それは、オニパンの休みの日、水曜日。9時ごろ、ママがコーちゃんを連れて散歩に行き、お店の前を通って帰って来た時の事です。朝から、リーが見当たりません。ここのところ元気なく一日中、家で寝ていたのに。どうしたのかなあと思いながら、お店の中で仕事をしていると、お店の玄関の網戸越しにママとコーちゃんの姿。私がお店の網戸を開けると同時に、コーちゃんの後をリーが追いかけてきました。それも、何と元気のよい足取り!お~、元気な足取りだあ!!弾んでいるような姿!!ちょっと信じられない光景でした。リーは元気を取り戻したなあ。とてもうれしく思った朝でした。
その不思議な光景の謎は、後になって解かれていきます。生山さんがリーの訃報を知ってお店にやって来たとき、こんなことを仰いました。「リー君、最近珍しく我が家にやって来たよ。2か月ぶりに。」そして、サリーと車の上に乗って、一緒に座っていたよ、と・・・・・。それも、なんと、その時のシーンをカメラに収めていた・・・・・。
私は、この写真を涙なしでは見られませんでした。2枚目のように、リーはここのところ、いつもしんどそうに眼をつぶっている。しかし、サリーを見つめるリーの目、ちょっと力はないですが、しっかりしています。クロの恐怖を乗り越えて、しんどい中でサリーを一目見たかったのでしょう。
看板猫としての生きがい
(この写真は、9月11日(日)まだ少しは声が出せる頃のものです。)
リーは2度ほど病院へ行きましたが、症状が改善されず、私たちもどうしたものかと迷っていました。娘の勧めもあり、病院を変えて、入院させることにしました。一日入院して、丁寧に対応していただいたものの、状況は改善されず、病院の方もこれ以上の入院を勧めませんでした。私たちは、お家で対応しようと9月15日(木)の夜遅くリーを病院から引き取りました。
退院した翌日、リーの最後が近いと感じ、本人も家の外へ出たいようなので、好きだったマキ小屋の棚などに寝かせました。ほとんど寝たきりで動けないようなのに、気が付くと違う場所へ移動しています。
そこは、リーが今までお気に入りの場所だったところでした。猫は死ぬとき、人の前から姿を消すといわれています。それは、人に死に目を見せたくないということではなく、きっと飼い主も知らなかったその猫の好きな場所へ行こうとする行動からではないかと思います。リーを見ていて、それがはっきりしてきました。オニパンの前の資材置き場の薪の上だったり、我が家の車の下だったり。リーが好んで居た場所に移動しようとします。そして、驚いたことに10時前、オニパン開店の前にリーは、お店の方へやってくるではありませんか。
ちょっと歩いては、へたーと寝たような状況で進んできます。そして、お店の前までやってきました。リーは、その場所から大好きなバモス(商売用の車)の間を移動し、そしてまたお店の前に戻り、午後2時ごろ息を引き取ります。ママはたびたびリーの様子を見ていましたが、すぐに異変に気付きました。
リーが死に場所に選んだのは、お店の前でした。リーは、自分をかわいがってくれたお客様のことや人との触れ合いが楽しくて仕方がなかったのでしょう。リーが亡くなったすぐ後、涙ぐみながらママがこう言いました。「リーは生涯現役だった。」
看板猫としてリーは幸せな生涯を過ごせた。リー君は私たちに多くのものを残して逝ってくれました。ありがとうリー。
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