日常のささやかな工夫が豊かな暮らしをつくりだす・・・・暮らしの手帖(とと姉ちゃん)より №165

「とと姉ちゃん」を欠かさず見ている。最近の朝ドラの中では群を抜く出来栄えか。とにかく私にとって、面白く、ためになり、時として涙涙。ドラマの中心時代は、戦後の混乱期から高度経済成長期のころなのだろう。今は混乱期の雑誌社立ち上げの模様が話題になっている。

私が生まれたのは、戦後から数えて9年。5~6歳のころの記憶は今でもしっかり残っている。貧しかったねえ。家に畳が入っていなかった。家といっても6軒ほどの家族がそれぞれ1~2部屋でつながった長屋。もともと病院の病室を使っていて、廊下を歩くと、それぞれの家の晩飯がたちどころにわかってしまうという感じ。トイレは一つで朝の時間帯は悲惨。以前書いたことがあったと思うが、玄関に新聞紙を敷いてやったこともあった。その当時辛かったことの一つとして記憶にあるのが、服があまりなかったこと。ズボンがなく、赤い女物のを身に着けて、恥ずかしかった。

戦後の混乱期は食べ物の調達から始まって「衣食住」すべてで大変だった。しかし、そんな貧しい暮らしの中でも、人としての誇りを忘れないために、知恵をだし、工夫を重ねて暮らしを豊かに楽しくしていこうという精神で、とと姉ちゃんの雑誌社「あなたの暮らし出版」は出発する。戦争中、人々は物の価値を「国家」という抽象的なもののうえに置き、命まで含めて、「国家」を優先した。その結果はご存知の通り。とと姉ちゃんの朝ドラの世界では、日常の平凡な暮らしの中にこそ、大切なものがあると訴える。だから、その日常が貧しく、切ないものであれば、それを豊かにしていくことこそ、人としての暮らしぶり、幸せが実っていくと。

そうですよねえ、そんなこと当たり前です。私は「国家」という言葉が嫌いです。人ひとりの命には、その人が生きていく中で味わい体感する喜びや感動、時として辛く苦しくみじめな思いが詰まっているわけで。その人の人生を不思議な機械を使って追体験できるとしたら、そりゃあ「すげえことになってる」と誰でもが感じられるはず。例えば、日々練習を積み重ね、大会でそれなりの成果を上げられたら、どれだけ喜ばしく誇らしくうれしいことか。きちんと誠実に生き抜いている人々の味わっている人生の喜びや深みは、「国家」が勝手に左右できるものではない。だから憲法は「個人」という言葉を多用する。今論議されている憲法改正の草案はその個人をなくし「人」と一般化している。十把ひとからげにされちゃあたまらない。まず大切なのは、人々の暮らし。その暮らしを守るために国という制度があるわけだ。その暮らしが大変になってまで、いろんな理由を使って、お金を勝手に使わないでほしい。食べるものもなく、死んでいっている人までいるのに。ううう、つい、脱線してしまった。私、近頃よくそんなことを考える。年を取るっていうことは、自分以外のことがよく見えてくるってことかな。話を戻そう、今回のテーマは「日常の暮らしをいかに豊かにすることができるか、ささやかな工夫で」だ。休みの火・水は毎週そのことで頭がいっぱいになっている。やりだしたら止まらない。それほど、楽しいひと時になっているようだ。

この間の最大の仕事(パン屋としてではなく、個人として)は、何といってもカフェの天井の断熱。毎年悩まされてきたカフェの猛暑。並べているパンたちにも気の毒な思いをさせてきた。ミルククリームなど液体に。クリームやチーズも傷みが早くなる。部屋の中でカフェをするお客様方にとっては、不快指数も高くなる。この状況を打破すべく、昨年は広い屋根一面に遮光ネットを張り巡らし、穴の開けたホースを這わせて、水を流すという作戦に出た。ネットを張るのも大変だった。しかしあまり効果もなく・・・・しょぼ。さらに追い打ちをかけるように、そのままにしておいたネットにごみや落ち葉が絡み。取り外すのも大変。どうしたもんじゃやろのう。(とと姉ちゃんの決まり文句)

「焼けたトタン屋根の上の猫」という小説がある。どれほど熱いか。遮光ネットを張っていて、その熱さに驚いた。火傷しそうだ。その熱が、下のカフェに舞い降りていく。カフェの空間の上半分の温度は高い。テーブルの上に立つと顔のあたりがモ~っとしてくる。40度以上は確実。エアコンが効くはずがない。なんで断熱材を入れなかったの?工務店さんに訊きたい。でもその工務店は倒産している。やっぱり感。そこで考えた、どうすれば簡単に見栄え良く、断熱ができるかを。まさに「あなたの暮らし出版社」だ。結論は、発泡スチロールを天井の梁に沿わせて埋め込む。美しくする工夫は、白のスチロールにペンキを塗る。すると、珪藻土のような質感になった。発泡スチロールはカネライトフォームという名前の断熱材。ほぼベニヤ一枚の広さ。厚みは40ミリ。15枚を注文(24750円)。ペンキ代は約3500円(2缶)。一人ではなかなかできそうにない。弱っていた私の姿を見てか、心優しい上田家具製作所の上田さんが助けてくれた。

DSCN3993[1]カネライトフォームを切って、ペンキを塗る。

DSCN3995[1]梁と梁の間の間隔は、微妙に違うので調整していく。

DSCN3997[1]天井に埋め込む。入らなかったり、ゆるゆるで落ちてきたり・・・。そこは根性。あち~し。DSCN3999[1]

だいぶ要領がわかってくる。

 

 

 

 

DSCN4003[1]こうやって、できていった。完成後暑い午後に天井を触ってみた。すると~なんと~まったく熱くない。発泡スチロールの断熱ってすごい。だからエアコンを27度にしておくと、問題なく27度以下になる。すご~!!上田さんに二日にわたって手伝っていただいたが、手間賃を抜いて(手間賃払っていないが)材料費で29000円。まさに「あなたの暮らし出版社」に応募したくなる件である。

こんな感じで、不都合に感じている個所を改善していくのが無性に楽しく、夢にまで出てくる始末。幸せって日常のささやかな暮らしにあるって実感する日々。

工房、カフェの厨房からカフェスペースに出ていくときの戸口の狭さ。日々不都合を感じてきた。通販の番重を運ぶとき番重の幅いっぱいいっぱいで、時々番重を持つ手を戸口にしたたか打ちつける。そこで、食パンスライサーを置いている台を小さくしつつ、使い勝手はそのままにすることで改良。

こんな状態の台を

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DSCN4119[1]こんな風に。

DSCN4120[1]戸がしっかり開くようになりました。

ベッドの布団が下へ落ちるので(冬の時)落ちないようにするにはどうしたもんじゃろうと考えました。そこで、次のようにしました。

DSCN4114[1]畳ベッドの側面に柵を取り付けました。使わないときはこんな風に下へ垂らして。そして使うときは

DSCN4115[1]立てて、ひもを渡します。布団が下に落ちなくなりました。

とりあえずこんな風に工夫しています。