「氏より育ち」。まさに教育の神髄。もちろんDNAを否定するつもりはない。しかしどんな生物も与えられた環境のなかでしかその素材を開花させることは出来ない。
例えば野菜を例に取ると、しっかり育った苗でさえ、その後の土の状況(肥料の状態)、気温、水分、日差し等の違いで成長は大きく異なってくる。
人間はもっと繊細な生物だ。野菜を育てるような外的な環境のみで完結するのではなく、脳への働きかけ、五感への働きかけ等複雑な要素が人を育てる。教育的側面と言えるかな。
よい家柄に生まれればそれで立派な人間になれるわけではない。それよりもどのように育てられたか、育ってきたかが大切。「氏より育ち」とはそういう意味だ。(最近の若者はこの言葉を知らないらしい)
この言葉を使って、酵母作りを説明したあこ酵母の社長。私はその言葉を聞いて、「目からうろこ」状態になった。あこ酵母を作るために元となる酵母があるはずだ。その元酵母を培養して数を増やす。
<天然酵母は、純粋に一つの酵母のみを量産することは出来ない。いろんな酵母が混じる。工場で科学的に純粋培養するイーストが発明され、パン業界ではにわかにパン作りが容易になり、大量生産が進むことになった。しかし、天然酵母は純粋ではなく違った酵母も入ってきて、さらに雑菌も入り、安定しない酵母となる。作る度に多少の違いが出てくる。しかし、それが魅力であり、面白さともいえる。>
話を戻すが、あこ酵母の社長に尋ねたことがあった。「北里大学から有名な石割り桜に付いていた酵母菌を使ってパン酵母を作ってほしいとの依頼があったそうですね。どんなパン酵母が出来るのでしょう?」すると社長は「どんな酵母菌もそれぞれが味を持っているわけじゃあない。たいして変わりゃしないよ。それよりも、どう育てるかが大事。」と答えた。なるほどねえ。育て方かあ~。
それから私は、酵母菌の育て方を意識して、酵母作りをしてきた。そしてオニ酵母を作れるようになった。そのノウハウがあれば、オニ酵母以外の酵母(元種というか)を増やすことが出来ると考えた。
ほぼ全てのパン屋やパン作りに関わっている人たちの中で使われているのがイースト菌だ。このイーストは特有の「イースト臭」があり、臭いと嫌う人も多い。しかしこの純粋培養で科学的に工場生産されたイースト菌(学名サッカロマイセス・セレビシエ)をオニ酵母のやり方で増やせば、美味しく育つのではと思った。そして実践。それが昨日。
そして、昨日の試作から本日はその酵母を強化し、さらに作り方も発酵を長めにして、いざ!!!!


やはり!いつも作っている山型食パンとかわりない大きさまで膨張しました。そして焼成!

うお~!!やったあ~!!!見事に焼けました。いつもの山型食パンと比べてみると・・・

右が試作。左はいつもの山食。

右が試作。

右が試作。
姿はいつもの山型と変わらない!発酵力は、今回試作の方が上だった。
多分味もほぼ一緒だと思う。生地の質はどうか。多分遜色はないはず。もしかするとより良いかも。
イーストという純粋培養の菌を使っているので、より良い可能性も。あ~早く食べてみたい。
追伸:昨日の試作実験の結果を見て、そして食べたママと中村君の言葉 ママ「このパン、蒸しパンみたいやん。」 中村君(笑って)「これキューブの形にしたらどうですか」実験して、本質を見いだそうとしている私の意図的な失敗を理解してない言葉。(💧)
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