泉水山(せんすいざん)と黒岩山(くろいわやま)へ№99

6月6日、あの長者原から登り始める泉水山・黒岩山に挑戦した。やまなみハイウェイを挟んで対峙している久住山は全国的に知られた名山だ。私は高校時代、実は山岳部のキャプテンだった。そのころ久住山にも登ったし、大船山(たいせんざん)からスタートして3泊4日で平治岳(ひじだけ)、八丁原、一目山(いちもくさん)、涌蓋山(わいたさん)を従走したこともある。それはそれはハードな山行きだったことを思い出す。
こう書くと何か山のスペシャリスト的な臭いを感じるかもしれないが、全く実際は別物の私。
「広く浅く」が身上の私は、「過去にとらわれない」という性癖も加味して、昔のことをあまり記憶していない。大分の山に登りだした近ごろ、ちょっと気になっている湧蓋山(何せ山容が富士山のようにきれいなので)なのだが、高校時代の日記帳を読み返すと、なんと登っていた。
山の名前も含めて、縦走したことも忘れていた。そう言えば・・・・山岳部の頃の恥ずかしい思い出が浮かんできた。
高校2年生の夏、1年生からやっていたヨット部を退部しぶらぶらしていた私を同じクラスのN君が「山岳部に入らんか」と誘ってきた。私の通っていた高校は進学校で運動クラブがあまり盛んでなかった。例外にもれず山岳部も部員が少なく廃部になりかかっていた。私とN君は入部を決める。2年生は二人。3年生がいなくなってから私がキャプテンということになった。
時々顧問の先生と山に行くわけだが、普段の部活動をどうするのか・・・。
話に聞くとタイヤを引くトレーニングなどするらしい。でも私とN君はそんなこともせず、校庭の隅っこにテントを張ったり飯盒炊さんの練習をしたりして遊んでいた。
3年生になると大分県下の山岳部が集まって競技大会があった。恥ずかしい話だが、その競技会がなんだったのかも良く思い出せない。インターハイっていうのかな。
私としては何で山登りをするクラブなのにレースがあるのか理解できなかった。速さを競うわけではないようで、何を持ってそのレースの勝敗を決めるのか?
しかし、登山がスタートすると理屈抜きに「勝敗」を思い知らされた。
1チーム5人編成だった。たくさんの高校のチームがいた。優勝候補と言われていた?チームが妙に印象に残っている。確か「日田林高」だったかな。「スゲっ」体格がいい!足腰がふてえ!
我々はもやしみたいなのに。
一日目何とか行程を乗り切った。死にそうだった。二日目みんなふらふらだ。歩いていると私の後ろで「どさっ!」みたいな音。振り向くと副キャプテンのN君が倒れている。気を失っている。
それで、レースからリタイアということになった。私たちのチームはハードな男子の登山コースが無理だと判断されたのか、女子チームのコースに変更された。
私は少し嬉しかったことを覚えている。ちょっと楽になるのかなと。
しかし女子コースもそんなに甘くはなかった。必死に歩くのだが、女子について行くのもいっぱいいっぱいの状況。そのうち2年生の子が足をつった。そういうことで私たちは女子のコースからも離脱。失格ということに。
さらに、追い打ちをかけるようなことも。休憩の時に各チームのキャプテンが呼び出された。何をするのだろう。眺望の良い場所で一人ずつ質問される。
「あの山はなんという山ですか?」「北はどちらの方ですか?」
方向音痴の私に何でそんなことを聞くの?私は、全く何にもわからないのだが、何か答えねばチームの名誉に関わると、思いつくことを夢中で言った。でも頓珍漢な答えに、審判員はどう思っただろう。今さらながら、赤面してくる。

そんな思い出のある久住山を前に、今登るは泉水山。
いやあ~もう、本当にいいコースなのです。何がいいって、眺めが最高!


12時9分 長者原 コスモス荘近くの登山口。

右 12時30分 展望が開けてきた。

12時35分 登りが続くが、ゆっくり歩幅狭く登るとそんなに息が上がることはない。それ以上に景色の美しさに見とれてしまう。
今日は1500メートルに挑戦。前回の万年山(はねやま)は1140m。かなりの高度になるなあ。


1時過ぎ。登り始めて約1時間。薄暗い妖艶なくねくね樹林を過ぎる。この木の名前は知らないが、神戸の六甲でも良く見かけた樹林だ。

下泉水山の頂上。狭い岩場になっているが、景色は格別。目の前に三股山が見える。時刻は1時30分。お昼御飯だ。今回はローソンではなく、湯布院のAコープで買った本格的な弁当(390円)。これがまたうまい~!!

同じ山頂より見える三股山や星生山(ほっしょうざん)。

2時20分。お昼御飯より、40分ほど登って、上泉水山頂上にたどり着く。お二人の背景は、やまなみハイウェイを挟んで向かいの三股山、星生山など。この場所で、夫婦連れの登山家と出会う。この方たちより付近の山々のことを教えていただいた。
三股山と星生山の間に見えるのが九州で一番高い中岳。360度の素晴らしい眺望!感動とのこと。あるいは三股山の左に見える平治(ひじ)岳は、ミヤマキリシマがとてもきれいだとのこと。
私は中岳と聞いて、「ああ阿蘇の中岳のことですか?」と聞いてしまう。やはり全くの方向音痴なのだ。なんで、こんなところに阿蘇山があるのか。我ながら自分が恐ろしくなってくる。(ママは私を完全に馬鹿にしていた)

上泉水山より黒岩山に向かう。
尾根道は、西も東も眺望がきいて爽快!

ミヤマキリシマの鮮やかなピンクも心を癒す。
結構お天気も良く、日差しがきつくなってきた。黒岩山までもう少し。しかし、しばらく、だらだら登りは続いた。

  見てください。嬉しそうな塚原「12の月」の女将の喜びよう。女将の後ろにいるオニパンのママは得意にVサインを出してはいるが、ほとんど見えていない。
女将の喜びようにはわけがあるので。
12の月の女将は黒岩山の頂上を前にして、ママに「私ここで休んどく」とリタイアを表明。
ママがその後、山頂まで来て引き返し、「もうそこよ、がんばって!」と女将を励ます。
気を取り直して、女将は1502メートルの黒岩山山頂に立った。
というわけで、このポーズなのだ。よほど嬉しかったんだなあ。

その後、牧の戸峠まで下り、九州自然道を長者原まで歩く。約1時間。
全行程でほぼ5時間。歩行時間は4時間くらい。結構な運動量だった。

このコースは久住山の銀座通りに比べ、静かでのんびり。景色の素晴らしさといい、お手頃な運動量といい、心満喫できるコースだと感嘆した次第。
ますます大分の山に引き込まれていく私たちなのだ。