塚原高原 №79

この間、雑誌の取材が二つあった。そこで、編集者とお話していて、気付かされたこと。「塚原高原は、水や空気がきれいなので、美味しいパンができるのでしょうね?」この質問に、私は「そうですね。」と答えても良かったのだが、無意識にこんなことを言っていた。「確かに水も空気もおいしいのですが、私の場合、工房から見えてくる(網戸にしているので、外の様子がわかる)夜明けの空の美しさなど、思わず手を合わせてしまうほどの、塚原の美しさに、パワーをもらっています。」
作り手の心の状態が、つくられるものに乗り移っていく。塚原で仕事をしている人々は、塚原に魅せられて、そのふところに包まれる中、生きる力を生み出しているのだと思う。
私は、天気の良い夜明けごろ、パン作りの手を止めて、20~30秒ほど外へ飛び出す。意識しているわけでなく、もうじっとしておれなくなり、日の出を見たくなる。人間の本能?
ちょっと見て、工房へ戻り、そして気になってまた外へ飛び出す。それを3回ぐらいすることも度々だ。



とても神秘的なこのような夜明けもあれば、空を赤く染めながら登りくるお日さまの日もある。
霧が出て、そこに虹がかかり、黄金いろのキツネが飛ぶ日もあった(以前紹介した)。
澄んだ冷やかな大気を細胞で感じ取り、自然の営々たる動きに、驚きと感動を受ける。あ~、生きているってすごいなあ!こんな、美しい世界で日々生かされていることに感謝しつつ、登りくる太陽に手を合わせる。世界が平和になりますように!みんなが幸せに生きられますように!