師匠曰く パン文化はリテールベーカリーが担う

私が修行したあこ酵母製造元「あこ庵」の社長近藤泰弘氏と最近話す機会がありました。「パン文化は個人店が作り、担っている。このままでは、日本のパン文化がなくなってしまう。」との危機感を訴えていました。

なるほど、そういうことか。社長の考えていることは広く深いなあ。所ジョージの「所さん、事件ですよ!」でも、最近やっていた。過去最高の倒産件数。主に個人店。このままの状況が進んでいくと、資本力のない、3K職場のリテールベーカリーは、人手不足となり激減するだろう。大手のスーパー、大規模小売店が進出し、個人店の商店街がシャッター通りになっているように。

オニパンがそうであるように、各個人のパン屋は、それぞれの特徴を持っている。別の言い方をすれば差別化を図らないと生き延びることはできない。小麦の種類、原材料、仕込み方、発酵、焼成方法、仕上げ・・・限りない工夫を絶えず追求している。そして、素敵な、ちょっとどこにもないような、おいしいパンを作り出す。それが出来るのは、技術・熟練・ヒラメキなど自由な創造ができる個人店であるからだ。それが故に、そこに、パン文化が花開く。工場での大量生産、機械の技術では出来ないことが多々ある。

これは、ファミマのイチオシのパンのようだ。もとコンビニの店長だったオニパンの新スタッフ中村君が、「是非食べてみて」と、持ってきた。九州産小麦を使い、カスタードにジャージー牛乳を使っているという。見た目もどっしりと量のあるデニッシュだ。値段も安い。たいしたことないだろうと、たかをくくって、食べた。おっと、カスタードはおいしいぞ!まあ色々(添加物)入っているが、味的にはおいしい。味の研究もしているから、美味しいのだろうなあ。九州産小麦とかいてあるから、それなりにパン生地もうまい。しかし、デニッシュの名前を冠していても、デニッシュとしての生地は今ひとつ。もう一つ。いずれすごい機械が発明されて、バター(このパンはマーガリンだけど)の折り込みが出来るのかも知れないが。けれど、小麦の生地が機械での大量生産に合うほどの耐性がないので、どうしても、耐性を強くするための添加物を入れざるを得なくなる。本来の自然な食べ物とかけ離れていく。

リテイルベーカリーは、味の向上を考えるとき、添加物よりも、質の良い原材料を探す。美味しくするための、いろんな調理法も考える。それは、大量に出来ないけれど、質は向上する。リテイルとホールセール(大規模生産)は、目指すところが違うのだ。その個性が文化を創るし、担うのだ。

もう11月が近づいてきた。オニパンはそのパン文化の片隅にいて、ささやかに考えていることは、再度自家栽培小麦の生産。一度あきらめていた栽培をもう一度挑戦しようと。

小麦を作る前段として、考えねばならないこと。獣害対策。これもパン文化のために必要なこと。