萱籠(かやごもり)のプレゼント

休日は、しばしば、ママとジョギングやサイクリングに出ます。最近、オニパンカフェから、寒水(そうず)という地を抜けて、萱籠までゆっくり走って(歩いて?)います。
萱籠は、その名の通り、四方より樹々に覆われ、空も地も狭い所。そんな土地にいくつかの家が数軒かたまって、点在しています。
先週の休みも萱籠へ。なぜか、そこへ来ると不思議に心が落ち着くのです。古い木造の家々は、すべて斜面に建てらています。玄関側は坂を上った庭に面し、向かいの奥の側は、斜面の下の地より上に伸びた柱で支えられています。横から見ると、家の1階の床下は、斜面と柱が作る三角の空間があり、きっとその空間に以前は牛などを飼っていたのだと想像できます。牛小屋を別に建てなくてもよいわけで、昔の人の知恵には感心させられます。そんなことを、思いながら、家への登り口に植えられたお花の見事さに気を奪われていると、上から、背中の曲がったおばあちゃんが、下りてきます。
「へえ、あんたたち、塚原からきたん。」
おばあちゃんは、私たちがパン屋だとわかると、おどろいて、
「そうだったん。前に、パンを貰って、ずっと気になってたんよ。」
とおっしゃいます。
ママの話だと、一年ほど前、旦那さんと一緒にオニパンに来たことがあるとのこと。その時の話では、おじいちゃんが車を運転して、病院や温泉に行ってることなど話したそう。パンが売り切れていたので、せっかく来てくれたのだからと、冷凍の食パンと菓子パンをあげたとのこと。
おばあちゃんは、80歳。おじいちゃんは86歳。昼は熱いので、家の中で寝ていて、夕方涼しくなってから、畑仕事に出てきたそうです。楽しみは、温泉や病院に車で出かけること。死ぬまで、人に迷惑をかけないよう、暮らしていきたいと笑いながらお話してくれました。
パンを貰ったことが、嬉しかったそうで、おばあちゃんは「ちちゃいけど、おいしいよ。」と、干しシイタケを二袋私たちに持たせました。
萱籠の静かな空間が、さらに心地よく、身近に感じられる一日となりました。