もう一年が過ぎます。

オニパンカフェは、この6月28日で一周年を迎えます。
一年前は、開店を前に頭だけが先行し、企画だけは立派なものが
予定されました。でも悲しいかな生産能力が低すぎて、大量に押し寄せる
お客様を前に、右往左往。悪夢の一日となりました。
さて一年も経つと、ちょっと余裕も出てきたのか、周りが少しは見えて、自分の力量も見えて、
実現可能な企画が立てられそうです。一年前と違うのはそこだけではありません。
現在、2名のお手伝いさんがいます。
その2名のスタッフは、本当によく頑張ってくれます。世界にはいろいろな人がいるといわれますが、
そのお二人を見ているだけでも、私とはえらい違いです。仕事に対して真摯な姿勢を持っています。
時間に対して敏感。必ず10分前にはお店にやってきます。ボーっとしていません。いつも手が動いている。仕事を見つけ出し、
てきぱき動く。間違いを隠さない。明るいし元気。
まあこれだけ書くと、立派過ぎますね。緊張感を持って、がんばってくれているのだと思います。私ももっと早くこういうことを身につけるべきだったと
お二人を見ていて感じています。リーダーの私ももっと成長せねばね。(写真はオープン当日の様子)

 

修業

50歳を過ぎて、新たな道を求め、修行することは、辛いものだ。パン屋をやるためには乗り越えなければならないいくつかの試練がある。一つは早起き。次に立ち仕事に慣れること。そして長時間労働。大阪門真市の元職場近くにあった夫婦二人でやっているパン屋さんにちょくちょく行った。そのパン屋さんは朝の4時から仕事に入り、営業は夜の8時まで、片づけて9時に帰る。懸命に働き続ける二人の姿に怖れにも似た感動を受けたことを覚えている。私の修業したパン屋「あこ庵」の初日は、朝4時からスタートし、終わりが7時半だった。一日目で自信をなくしたことが思い出されるが、同時にそんな労働を日々続けているパン職人さんへの敬意も感じざるを得なかった。長年生きていると、知らず知らずに、プライドが蓄積し、狭い自身の生活場での「常識」がすべてだと勘違いしてしまう。年をとっての修業は、まずは「自分壊し」ができないと、前に進めない。(写真は2回目の修業先「ナチュラル・プクー」)

 

巣立ち 我が家のすずめ

我が家のすずめちゃんがついに巣立ちの時を迎えました。それは5月12日の火曜日のことです。パン屋が休みの火曜日はいつも嫁さんと朝昼を兼ねたお食事を部屋の外のデッキで食べます。その場所から、すずめのおうちが良く見えるのです。その日は、盛んに親スズメがえさを巣箱に運んできて、たいそう賑やかしく飛び回っていました。巣箱の入り口から、何かまあるいお顔がのぞいています。あれえ、なんだ、あのお顔は?ずっと、外を見ています。口ばしがちょっと黄色いお顔。そう、それは成長した若スズメっだったのです。私がコーヒーを図ずずっとすすっている間に、嫁さんが「飛んだ!」っと奇声を発しました。2羽のスズメが巣立ちをしたのです。そして、それとほぼ同時にカラスが「ガーガー」と鳴きました。まだ巣箱に若スズメが残っていて、顔を出したかと思うと、またすぐに引っ込み隠れてしましました。巣立ちは危険がつきものなんですね。それで、若スズメは、じっと外をうかがいながらそのチャンスを待っていたのでした。私たちが食事をしているすぐそばを、巣立ちした若者が黄色い口ばしに葉っぱをくわえて、ぴょんぴょん飛び回っていました。私たちが襲わないことを知っているかのように。

 

フランスパン

大阪にいるころ神戸の「ビゴの店」に行って、フランスパンを買ったりしました。私にとって、フランスパンは最終目標であり、フランスパンをしっかり焼けるパン職人になるのが夢でした。仕事をやめて、「7カ月ほどフランスに行く」と女房に言っていましたが、結局行ったのは東京でした。あこ酵母の製造元「あこ庵」でパン修業。あこ庵ではフランスパンの製造について学ぶ機会はありませんでした。
続いて、「日本パン技術研究所」の研究生となってパン製造を学びました。一応フランスパンも学んだのですが、ほとんど身につけることもできませんでした。そして、パン屋開店。上の写真は開店当初のお店に並んだフランスパンです。下のものは、今日お客様が撮ってくれた最新のフランスパンです。別府から来られたYさんは、「ここのフランスパンはとても見事!クープがきれいで、エッジも立っている。感動するわ。」それを聞いていた私の方こそ、感動でした。誰から教わったわけではありません。ただ日々、細心の注意を払い、工夫とその結果の積み重ねでここまで来ました。もちろん、まだまだ未熟な腕前ではありますが、人間って進歩するものだなあと思います。写真を見れば「論より証拠」ですよね。

 

塚原に春が来た!

冷たい、寒い、辺鄙(へんぴ)、陸の孤島なんて言われている塚原。夜になれば真っ暗。人里離れている感じの我が店オニパンカフェ。雪の降る日は、一日中お客さまを待つ日も。暖かくなってくると、木の芽や草はらの緑がチラホラ顔を出してきます。
でもパン屋のおやじである私にとって、春が来たと感じる出来事は、お客様がたくさん来てくれること。今日は日曜日。晴れ。暖かい。するとどうでしょう、朝早くからからお客さまが、お客さまが、・・・。いや、こんなに塚原に人がいるなんてと久しぶりに感じた一日。
やっと塚原に春が来た!って感じましたね。 お店のテラスにある楓の木の幹に巣箱をとりつけています。野鳥の好きなお客様が、シジュウカラ用に作ってくれたものです。私はお店がお休みの日は必ず巣箱を観察していました。すると、2羽のつがいのスズメがその巣箱を意識して、盛んに入口の穴に顔を突っ込みます。その巣箱は、シジュウカラ用で穴の直径が2.8センチ。3センチ以上だとスズメが入るからとのこと。でも、うちのスズメはその巣箱が気に入ってしまい、新婚生活の新居にしようと企んでいるようです。長い間顔をつっこんだり出したりしていましたが、ななんと、穴の中に入ろうと首から胴体を無理やり突っ込んでもがきだしました。そしてコツがわかったのかストンと中へ。それからというもの、せっせと藁を新居の中へ。愛の巣が出来上がりました。野鳥の専門家であるお客様の話では、「もう卵が産まれているでしょう」とのこと。どんな赤ちゃんが顔を出してくるのか。ここにも塚原の春がありました。