イベントを通じてもたらされた多くの収穫!

DSCN5423[1] 前回の折々帳から3カ月が過ぎようとしている。名前を「たまたま帳」に変えようかと悩んでいる。折々の出来事への感想や思いは決して軽いものではなく、ここ数カ月の出来事は齢を重ねた自分自身にとっても、新鮮でもあり、鮮烈でもある。ゆっくり休んでいる暇もなく、休日と言えど、休むこともなく動き回っている。退職、引退、隠居、高齢者・・・感覚として無縁な響き。

イベントが二つ重なってしました。11月26日。この間、恒例となっている「赤野マルシェ」。大工の簔原さんが主宰するイベントが、昨年より大規模になり、場所も蓑原邸の庭から、「のぞみ園」となる。今一つは、由布市が主催する「由布市復興応援キャンペーン」のイベント。由布市のパン屋を集めたミニパンフェスを一部の企画として開催。どちらともそれなりのパンを持って行かなくてはならない。そして日曜日なので、平日よりも多くのパンが店売りとしても必要になる。

実績、キャリアというか、経験とはそれなりのものを生み出してくれる。冷蔵生地の技術や日持ちのするパン生地を前日夕方に焼き当日に仕上げるなどの工夫で、1年前の2倍以上の量を生産できるようになった。さらに付け足しておかねばならないのが、従業員さんの技量。小さなお店にしては私も含め3名の職人が朝からフル回転でパンを製造しているわけで、しかも3名の技術は相当にいい(手前味噌ながら)。11月26日、3名で朝4時から製造(私は3時から)。8時半からは、お隣のマチ子さんが、袋詰などのお手伝い。こうして、第一陣の「赤野マルシェ」へとパンを届けることができた。

DSCN5425[1] この販売の様子、私が何を言いたいのか、よくホームページをご覧いただいている方には察しが付くと思う。わかりやすいです。何が?お客様にとって、買いたいパンのことが!番重にたくさんの種類のパンをごちゃごちゃに入れて、パンを売っていた今までの販売方法がいかに問題があったか。9年間それを続けてきたのです。お店では、プライスカードがあり説明も書いているわけですが、イベント時には全くそれもなく、「このパンはどんなパン?」「おいくら?」となるわけです。最近は、パンの袋に値段シールを張り付けていましたが、それでもどんなパンかはわからない。本当に商売が下手というか、世間知らずのオニパンでした。この陳列パンボックスをつくろうと思ったのは、8月11日のビーコン祭りがきっかけでした。その時は何店舗かパン屋が出店していましたが、お隣のお店「マコズベーグル」さんが、なかなか素敵な入れ物で販売していました。詳しくは見てなかったのですが、その箱と、おいしそうなベーグル、そしてグワ~っと並んだお客様の列に圧倒され!!すごいなあ~!!あきれ果てるほどうらやましく思いました。あとでマコズベーグルさんの奥さんとご主人に話しかけました。すると、とても気さくな方たちで、オニパンの別府店にもよく行ってくれているということでした。

雑誌でしか知らなかったマコズベーグルさんと知り合えたこと、そして陳列ボックスのこと、お客さんが並んでくれない悲しい思いなどとても勉強になったイベントでした。もし次にイベントに参加するときは、この教訓を生かそうと思いました。

次のイベントは、11月26日に決定!10月くらいから、設計図を考えました。だいたい構想がまとまり、いざ作り出したのは、その6日前。やはりね。なんでもその調子でぎりぎりにならないとできません。本当にできるのか。6日前以前より、夢にまで出てくるほど、プレッシャーが。それでもしないのが私の性格。ママから、「気になるんなら早く作れば」と言われながら・・・。そして、つくりだすと、夢中になって時間も忘れ・・・。無心状態。もしかしたら。人生で一番楽しいひとときかも。特に工夫して自分だけの発想で便利なものが出来るとき、「創造性」というのかなあ、人間ってそんなとき、すごく幸せになるんだろう。縄文人があの芸術的な火炎土器をつくっているとき味わった感覚ではないのか。縄文人の気持ちがわかるなあ~。(だんだん飛躍するのも私の性格か)

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その陳列ボックスの詳細を知らない方もいるかもしれないので、写真を載せました。このボックスの特長は、商品の種類や量に応じて仕切りを移動できるところ。そして、その説明のプライスカードを移動できること。ボックスの背に2本の細長い板をはっています。その2本の板に穴を多数開けて、適度な場所に番線を差すことができる。これを使って販売をした由布市復興応援のイベント嬢が「エ~!あのボックス、マスターがつくったんですか~!すごく便利ですねえ。ポップの位置も変えられるし。」と感想を。私は「あんなの既製品で売ってるわけないでしょ。買ったら、2万円はするだろうし、そんなん買えんし。」するとイベント嬢は「2万円でも買えないと思うわ。」だって!嬉しいお話じゃないですか。そんな陳列ボックスの威力もあってか、二つのイベントともに完売でした。

この間のイベントで得たものは、製造量の増加、陳列ボックスという販売方法だけではありません。もしかすると、最も大きな収穫物だったのは・・・。それは、パン屋さんとの出会い。

8月のビーコン祭りのとき、マコズベーグルさんとお話ししました。子育てをしながら、週に一回の販売に向けて仕込みの日々。10数種類もあるスティックベーグルとそのほかのパンたち。スティックベーグルという斬新なベーグルの開発を思い立ったあたりの努力心には頭が下がるというか・・・。あれだけのお客様、ファンを持っているだけの根拠を垣間見る思いでした。包装から、販売スタイル、どれをとってもすごい!!多くのイベントで絶大な人気をほこっています。その夫婦お二人は、とても庶民的で!奥様は美人、旦那もまあまあか。(笑)

11月26日赤野マルシェでなつかしいパン屋さんと出会いました。それは、大分医大近くにお店がある「コヅチ」さん。

DSCN5437[1] 以前2度ほどお店でパンを買いコーヒーを飲んだことがありました。コヅチさん夫妻もオニパンに来てくれました。とてもかわいらしい奥さんと寡黙で誠実なご主人が、二人で頑張っているのがコヅチ。26日も相変わらずの人懐っこい奥さんとお話しを。話していると、自然と笑顔になるから不思議。素敵な奥様です。子育ても大変だろうけど、二人の真面目な仕事スタイルにはいつも感心してきました。

DSCN5445[1]DSCN5446[1] 納豆ピザと甘栗とクルミの入ったブリオッシュを購入。食べてみると、それはそれはおいしかった!!納豆ピザ・・・こんな発想とお味あるんだって感嘆。そしてブリオッシュもたくさんのクリとクルミ。原価率大丈夫かなと思えるほど。近くに大手のパン屋さんが開店し、お客さんが減ってきているとのお話もあり、苦労しているんだと思いましたが、この味はすごい、大丈夫だと感じました。パン屋の仕事の大変さがわかるだけに、二人で一所懸命働く姿に嬉しくなりました。ご主人は、オニパンのホームページを見てくれているようで「塚原の小麦のパンは持ってきていないのですか」と尋ねていました。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA (この写真は、オニパンのお客様が撮っていた写真をお借りしました) 26日の大分駅前の由布市のイベント。想像以上に盛り上がっていたので、びっくりしました。由布市のスタッフの方が5~6人でパンの販売をやってくれました。これは、ほぼ終わりの時の写真です。私が話している方は、あの湯布院の老舗「まきのや」のご主人。「まきのや」さんは、私とお話がしたくて残っていたとのことでした(オニパンと2店舗で販売するということでしたが、少し遅れて到着した私でしたが、その時は開店から15分で完売しお店がありませんでした)。私も「まきのや」さんとお話ししたいことがありました。

10年前東京でパン屋の修行をしていた時から、湯布院のマキノヤは有名でした。私が湯布院でパン屋を開業したいと修業先のあこ庵の社長に言うと、社長は「マキノヤがいるから大丈夫か」と口に。まあ、私の方は、張り合おうなんて夢にも思っていないし、うまくいくなんて考えてもなかったし・・・。東京修業の前から、あこがれのマキノヤは相当意識はしていました。マキノヤにも行ってパンを買いました。そして、食パンが食べたくて、お店では手に入らないので、パンを卸していた「ことこと屋」「天井桟敷」に行って食パンのトーストを食べました。その時のことは今でも鮮明に覚えています。座った席も。「これが、あの、マキノヤの、食パンなのだ」と一口一口味わいながら食べました。パン屋を始める一年以上前のことです。マキノヤの先代は数年前なくなられ、息子が継いでいます。以前ちらっとお話をする機会があったのですが、一言二言で会話にもなりませんでした。その時、マキノヤさんは「オニパンの食パンはうまいねえ」と言ってくれてました。へ~気さくだと感じました。そして26日、お互いによくしゃべりました。全く飾らない方で、率直に実情も語ってくれました。商売の大変さ、今後の後継ぎのこと・・・。話していて、コヅチさん、マコズベーグルさんと共通の感覚にとらわれました。そうか、同業者って、こんな話になるんだなあ、気持ちが通じ合えるなあって。その人の人柄もあることはそうなんでしょうが。パン屋同士って、同業組合もないし、お互いライバルみたいな感じで、交流もないし。でもほんとは一番つながっていないといけない者同士なのでは。みんな大変な努力と苦労を重ねながら、夢をもって働いている。個人店(リテイルベーカリー)のオーナーは、ほとんどすべてと言っていいほど、パンへの憧れは持っているはず。そんなもの同士、つながらなくってどうするのと感じました。

イベントにありがとうって言いたい。いろいろと大事なものを教えてくれました。