生まれたものは必ず死ぬ。会うは別れの始めなり。4月がスタートし、希望を胸にのフレッシュマンには似合わない言葉だな。冷静にリアルに現実を見ればそれは真実。そんなものよ、人生なんて。別に投げやりになっているわけじゃないぜ。だから、今を大切に生きないとね。
なんのこと?それは本日販売終了となる「きなこ丸」のお話なのです。およそ7年の販売でした。オニパンの商品一つ一つに深い思い入れがあります。別の言い方をすればストーリィがあるのです。きなこ丸が生まれた経緯、それは私の前職での経験がもとでした。
学校給食にはコッペパンがほぼ主食としてでてきます。そのコッペパンはずんぐりとして、味ももう一つ。しかし、二ヶ月に一回くらいだったかな、「揚げパン」の日があるのです。その揚げパンは少し小ぶりで、生地がとても柔らかく、油で揚げて、甘いきな粉をまぶしています。そのおいしさは、思わず涎が垂れるような感じで・・・。子どもたちも、イヤそれ以上に、私が一番心待ちにしていた給食の日だったかも知れません。
そのパンを卸していたパン屋さんへ社会見学に行ったことがあります。

ゲゲッ、探したら出てきました。ライオンベーカリーへの社会見学の写真が。私が50歳の時か。すでに、私の将来の夢「パン屋さん」は確固として心にありました。ライオンベーカリーのような揚げパンをいつか作りたいなあ、という思いが心のどこかにあったのでしょう。
そして、忘れていた揚げパンのことを意識しだしたのが7年くらい前。揚げパンとしての生地はどんなものがよいか、そこからスタート。むずかしいですよね。そしてなんとか生地を決めたのですが、揚げたパンにまぶすきな粉をどうするか。たまたま宇佐の知り合いが「クロダマル」という大分名産の高級黒大豆を作っていたので、その豆のきな粉を購入。しかし、そのクロダマルの高級感と言ったら庶民にはちときびしい。半年くらいでやめました。それからまあまあ上質の国産きな粉に変更。定着しました。
さて試作当初は、揚げパンとして当然の長細いコッペ型でした。試作したその揚げパンを車の中で食べてみました。すると、きな粉がポロポロ落ちて、車内が大変な状況になりました。こりゃダメだ!そして、考えついたのが丸型のパン。これの方が食べやすいよね、と言うことで「きなこ丸」が誕生しました。
きなこ丸のプライスカードにはこう書かれてあります。
「マスターの大好きな学校給食の揚げパンを、小丸の揚げパンで再現。」
これが、きなこ丸の誕生秘話です。


どうしてやめるの?と聞かれそうです。一つは、あの揚げパンのおいしさが再現できていないという悔しさ、残念感。他店の揚げパンもそうですが、「おいしさ揚げたて限定」という賞味期限の短さ。翌日は生地が硬くなるしねえ。
これから先、揚げパンに興味が出たとき、再度挑戦しよう。その機会はないかも知れないけれど。出会いは別れの始まり。永遠はないのだ、みたいな感じで幕を下ろしましょう。さようなら「きなこ丸」。楽しいひとときをありがとう。
営業時間 11:30〜16:00
定休日 火・水・木(※木は予約販売受取のみ)
(※祝祭日は営業します)