蘇るか玄米生地 

玄米あんパン 玄米食パン|オニパンカフェじゃがチーズ白黒玄米生地は、オニパンの個性の象徴みたいなものだと、自負している生地です。由来はご近所の糖尿病の疑いのあるお客様のご依頼からスタート。あーでもない、こーでもないと考えてやっとたどり着いたものです。基本は体に良い生地というコンセプト。それで、原材料として考えたのが、

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①全粒粉 ②五穀米 ③クルミ ④国産玄米粉 ⑤熊本産みなみの穂 ⑥北海道産ゆめちから(上の写真)  あと⑦塩 ⑧太白ごま油 ⑨天然酵母(あこ、オニ) ⑩水(塚原の湧水)

こだわりぬいた原材料です。できたパンのお味は、食べていただければわかるのですが、香りがよく、奥のあるうま味、ほのかな甘さ、しっとりとした生地となりました。ただ玄米粉が入っているので、翌日は若干固くなります。そこで焼いていただくと、うま味がもどります。

この玄米生地が4月突然おいしく焼きあがらなくなりました。膨れず、小さくなったり、硬くて酸っぱくなりました。発酵時間や発酵温度を変えてみたり、ミキシング時間を短くしたり、その原因と思われることを想定して、製造法をいろいろと試してみました。しかしうまくいきません。できたパンを食べては、商品にならず、店頭に並べられない日々が2週間ほど続きました。変だ、今まで何の問題もなくできていたのに・・・・。

原因の所在がはっきりしなくては対処の仕様がない。ふとママが、「粉が変なのでは」とつぶやく。製粉所は江別製粉。有名な江別製粉に疑いをかけるとは・・・さすが恐れを知らないママらしい。しかし思い当たる節もある。というのは、新しく購入した「ゆめちから」を使いだしてからこんな状況が続いている。南の穂は普通の強力粉で、どちらかというと超強力粉のゆめちからがパンを大きくふくらます効果を出すわけで、疑わしいのは「ゆめちから」のほうだろう。材料を疑うという発想の転換から、業者に問い合わせてみた。卸の業者を通じて、江別製粉に問い合わせると、なんと今回の粉は、新しく収穫した小麦を製粉したものらしい。昨年度のものとは違うと判明。天候の影響で(雨が多かった)本来超強力粉であるはずのゆめちからがそうはなってない可能性もあるらしい。

小麦粉には薄力、中力、強力と三種類ある。それは含まれているたんぱく質の量によって呼び方が変わる。それは用途によって、粉の種類も変わるわけで。例えば、お好み焼きには薄力粉、うどんには中力粉、そしてパンなどには強力粉みたいに。たんぱく質にはグリアジンとグルテニンという成分があり、その二つの成分が水によって混ぜ合わされ、グルテンという物質に変わる。グルテンが形成されることによって、小さな風船がパン生地として無数の気泡を構成し、そこに酵母によって生み出されたアルコール炭酸ガス、様々芳香の気体が充満し、パンを膨張させていく。だから、繊細な精緻な上質のグルテンの気泡が作られることによって、柔らかな滑らかな触感のパンの生地が生み出されるというわけだ。このグルテンの形成に必要な要素として、水、温度、ミキシングの量などがある。その兼ね合いを探り当てることがパン職人としての技量ともいえる。

当然上手にグルテンが形成されたからといって、うまいパンができるわけではない。それはいわゆる土台、基礎であってその後の発酵過程そして最後の焼成過程はそれ以上に複雑で難しい。しかし基礎ができてないと、家もそうだが、まったくお話にならない。パンにならない。今回の問題はそういう種類の問題だったわけだ。

業者のS氏(営業担当)は、会社に勤めて40年になる。会社の生き字引的存在だという。S氏の凄いところは、お客(私)の質問や要望に即座に対応するというところだ。当たりはずれはあるものの、その誠実さは学ぶところ大だ。今回も難しい私の要求に対してあいまいにせず、対応してくださった。江別製粉の研究開発室のチーフから電話があった。企業の研究所の責任者だ。私の予想していたことは、その通りだとのこと。たんぱくが低いとはいえ、他の国産小麦よりは強いとのこと。ほぼ12%らしい。この対応には、給水量を落として、ミキシングするしかないのではとの指摘だった。原因が明らかになることによって、対策は立てられる。その後、62%だった給水量を56%に落とし、ミキシング時間も変更して試している。ミキシング時間は10秒単位での変更。それぐらい生地の仕込みは繊細な作業でもある。

しかしまだ玄米生地は完ぺきにできているとはいいがたい。まだ毎日玄米生地とのにらめっこは続いている次第。