パン屋の夏休み№149

一人旅の夏休みは3度目。バイクに乗れて、暑くなく、景色の良いところ…という3条件を満たす場所を探す。宮崎の高千穂辺りはどうか。宿は盆明けにも関わらずいっぱい。電話をかけまくる中で結局とれたのは五ヶ瀬町の民宿。番地もはっきりしないほど、奥まった山里風のところか。地理に関して自信のない私としては、ナビがないとたどり着けないのではと悩む。まあ、最近はグーグルマップという心強い味方もあるので、大丈夫だろうと高をくくって。

愛車セロー250。中古で購入して4年。購入した時点で5000キロの走行。そして現在6000キロ手前。ほとんど乗っていない。
2年前の夏休みに嬉野温泉に行ったきりで、休眠。
さあ、大丈夫だろうか。マシンだけでなく、私の運転技術も。

オニパン夏季休暇一日目、8月17日(月)、早朝7時すぎ出発。雨。少し寒い。
行程はやまなみ(11号線)を通って、阿蘇市へ。
ところが、10年以上前から使っているイエローコーンのカッパが役立たずと判明。
牧ノ戸峠あたりまで来ると、すでに下着までビショビショ。さみ~!!
お店が開いているではないか。入って、ほっとミルクで体を温める。
こそっと、下着まで着替える。
登山用のカッパを着て、さらにボロイエローコーンのカッパを上に着こむ。
ちょっとごわごわで、夏らしくない厚着状態で再スタート。


何度通っても、ここ瀬の本高原は、私の足を止める。
いいよねえ、心を打つ景観だ。
雨でも美しい。

これまで、景観の素晴らしさは、大分、熊本が抜きんでていて、これから目指そうとしている宮崎はちょっと格下と思ってきた。海の景色は、日南など「おおっ!」と感動ものの経験があったが、山というとなんかパッとしないような。
しかし、今回のバイクツアーでその格下概念が変わった。

11号線(やまなみハイウェイ)が終わる阿蘇市宮地を左折し2キロほどすすむと「坂梨」という交差点があり、そこから始まる265号線。(この線は熊本だった)
私はその道に惚れた。素敵だ。心癒し、目にも奪う、清涼吹き抜ける世界が広がっている。
ああ、いい!
さらに218号線もね!!(これは後ほど)

我が憧れの265号線。
塚原高原に勝るとも劣らない、草原の道が現れる。

やはり、これは、前に進めない。足が止まる。シャッター押しまくり状態だ。

バイクの良さはこれだね。体ごと、五感で、世界を受け止める。この頃は雨もやんでいた。
晴れたら、どんなだろう。見てみたい。


ここでも足を止めた。しかし、残念ながら、ガスで、阿蘇の山々は見えなかった。

バイクツーリングを満喫しながら、お昼ごはんの場所を探す。

道の駅「そよ風パーク」?だったっけ。そこで、「だご汁」とおにぎりを食す。これがうまい!だご汁のシイタケの香りと鶏肉、出汁のうまみ。
左のお肉は、馬肉のスジの煮込み。
酒の肴にと書いてあったが、これまたおいしくて。マイ土産とした。

当初の予定では、ゆっくりツーリングをして、翌日、宿の近くの山に登って、高千穂見物をしようかってことだった。
結構、早めに宿に着きそうなので、ちょっと欲を出して、翌日は九州3番目の祖母山(百名山)に挑戦しようと考える。だから、今日、高千穂見物。

神話の里高千穂。神秘的。いつも、観光雑誌に載っている、高千穂峡へ行ってみよう。

耶馬溪もそうだが、峡谷がすばらしい。
よくぞここまで削れたものだと思える、狭く深い谷。岩肌の筋目模様が鮮やかだ。

ただ、人が多い。多すぎるほどだ。
駐車所も4か所くらいあり、車が一杯。
盆明けにもかかわらず、観光客でにぎあう様子を見ていて、ちょっとうらやましくなる。
不景気でお店がつぶれている現状もあり、
これほどのお客が来ている高千穂峡のお店
を見てると色々と考えてしまう。


歩き回って、高千穂神社も参拝した。高低差ある道をたどってやっと行き着いた。

その後、ロッジ「森のくまさん」へ向かう。

五ヶ瀬町の宿「森のくまさん」は、なかなか良かった。
おば(あ)ちゃんが一人でやっていて、「もうやめたいんやけど、お客さんが続けてって言うから」と漏らしていた。

今日は誰も泊まらないということで、
ゆったりと、静かな環境で過ごすことができた。4時過ぎにお風呂に入り、5時から夕食。
6時には、床も用意してくれ、6時半にお布団へ。テレビも見ずに、ちょっと本を読んでいた。
8時半ころには寝る。
しかし悲しいかな、パン屋の習性で、目覚めは早い。
1時には目が覚める。それから眠れなかった。食事は朝7時ころと言っていたが、
おばちゃんは、5時ころには準備をし始めた。それで、6時から食べることにした。
休日もゆっくりできないのか、悲しい性。

しかし、今日は一大行事が待っている。
もしかしたら、この夏休みで一番のイベントなのかな。
いい加減なもので、昨日思い立った祖母登山。これがメインとなりそう。
森のくまさんのおばちゃんがその環境をつくってくれたようだ。

7時に出発。天気は良し!昨日通った218号線を進めば、祖母山の方角。道に迷いはない。
安心してツーリング。すると、昨日視界に入ってこなかった景色が飛び込んでくる。
すげ~な。218号線も素晴らしい。

ちょっと写真では伝えきれないのだが。いろいろと目に映る景色が、ジェットコースターみたいに、上になったり下になったりで、高低差が激しいのだ。壁がそそり立ったような景色が迫れば、次に下の方まで谷が落ち込んでいたり。そこにガスがかかり、中国の山水画のようにも見えたりする。
ジブリの世界。神秘的。なあるほどだ。神々が生まれた土地柄か。宮崎ばかに出来ねえ。

そうこうして景色を楽しみながら、218号線から8号線へ。この8号線は、竹田に続く道。この田舎道もいいねえ。
この途中に、北谷登山口への道がある。祖母は10数年前、ママと大分県側から登ったことがある。山宿に泊まり朝早くからスタートしないと帰り着かないハードなコース。10時間近くかかった。
しかし、宮崎県側から登ると由布岳並みの行程で行ける。
8号線から脇道へ。登山口まで林道が続く。
約30分近く。もう、なんてうまくできているの、って感じで、でこぼこの道を、まさに愛車セローのために用意された道が続くのだ。セローは、こんな林道を走るためのバイクだもんね。


着いた! 登山口にはトイレもある。
さあ、どのコースにするか。2通りある。
迷わず「風穴コース」にする。

由布岳にもたくさん風穴があるらしい。
ただ、それは、一部のオタクな登山家しか行けないようなコースにあるとのこと。
風穴は、夏でも冷風が吹き、壁などが凍っているらしい。

それを味わいたいと以前より思っていた。

山のぼりは、脚や息が慣れるまでしんどい。
今の私の体力であれば、脚も息もあまり慣れる状況にはならないようだ。日ごろからのトレーニングがないと、慣れる状態にならない。
だから、ず~と登りはしんどかった。
沢が続いたり、急な斜面をロープやクサリも使って登る。ただ、変化があるので、頑張れる側面もあるのか。

例えばこんな巨大なミミズが現れると疲れもどこかへ。30センチほど。きれいな青。

つるつる滑る沢などを登っていく。
結構ハードなのだ。
ひんやりとした大気とだれ一人いない静けさが
心地よくもある。

そのうち、現れたのが、例の風穴。
わくわく、バクバク。えっ疲れって・・どこ?って感じ。

こんな説明掲示。風穴内は危険だと。
冬場凍っていたら出て来れないみたいな。

梯子を使って、風穴内へ降りていく。ううっ、冷た~い!気もちええ~!!

さらに中を撮影。
危険そうではないが、暗いので、入るのはやめた。
でも不思議だ。どうしてそこまで気温が下がるのか。
凍っているようではなかったが。

風穴を出て、しばらくすると、メガネが曇って大変だった。

その後、険しい道が続く。風穴があったのは1370mくらいの地点。あと1756mまで400mほどはモクモク修業登山。

しかし早いもので、気が付けば、頂上。

140分のコースを120分で登頂。まだまだ捨てたものではないのかな。風穴コースは「健脚向け」とのこと。
少し嬉しかった。あきらめずに日頃より鍛錬して行こう。60代以降運動をしているかどうかの差が大きく現れる。

よほど嬉しかったのか、その余韻が続いている。昨日(25日)は、西大分の山渓(登山商品の店)
に行って、ズボン、その後ネットショップでヘッドライトや方位磁石を購入。

ママに「山に行こうぜ」って言ったら、「どうしたの急に」と言われた。

バイクも山もいい。
そして265号線や218号線。宮崎。
休日はいいなあ。