6月28日 オニパンカフェ5周年!

「石の上にも3年」と書いた折々帳。それからすでに2年も過ぎたのですね。速い!恐ろしく速い!!

6月28日、オニパンカフェはめでたく5周年を迎えます。
開店して5年の年月は、それなりの変化発展をオニパンカフェにもたらしました。
最初の1年は、ただがむしゃらの日々。
続けられたのは、心温かいお客様の援助やサポートだったと思います。
「残ったら持っておいで」「毎週届けてください」そんなお客様の思いやり(配慮?同情?)
を肌で感じながら、日々、パンのことばかりを考え、製造・販売に明け暮れました。

「継続は力」当たり前のように、簡単に使われるこの言葉の意味の深さ、重さ。今までも、しばしば感じ入ったことがありました。
継続しているものは、日々進化発展していく。その場にとどまることはない。もちろん取り組む姿勢は重要な要素ではありますが。
真面目に、努力し、続けられている仕事は、必ず深まる。
今もそう思います。

この5年でオニパンカフェはどう変わったのか。
この仕事を続ける中で、何に気付いたのか。
ママに聞いてみました。

①そうやねえ、先ずはパン作りが上手になったことかな。
パンのことがわかりだして、食材やフィリングなどの研究も進んできたね。
②そして、お客様の層が広がった。リピーターさんが県内・県外も含め、たくさん来てくれる。新しいお客様も、いろんな人の口コミで来ていただける。
③オニパンカフェにただパンを買いに来てくれるだけでなく、お客様にとって、癒しの空間になっていると、最近しばしば思うようになった。だから、そのようにお客様に接していかねばと思う。
④この5年間でいろんな人との出会いがあり、そしてスタッフを始め友人やお客様の支えがとても心に残っている。
⑤近頃オニパンの通販や食パンのチラシを作っていただいたデザイナーさんが、そのチラシに書いた言葉がとてもいい!

この5つの感想のうち3つ選んで、少し詳しく書いてみたい。

①パン作り
オニパンのスタート時点では、ほぼ修行時代のあこ庵のパンの受け売りがほとんどだった。
技術的にも未熟で、一度にたくさんのパンを作ることもできなかった。朝の2時に仕事をスタートさせても、開店時に並ぶパンの種類は10数種類程度。パン生地の発酵の見極めも下手で、小さなパンが並んでいた。
それが、1年2年たつうちに技術も向上し、相当おいしい(自画自賛)パンも作れるようになった。現在は、スタッフとの共同もあるが、5時スタートでも40種類近くのパンを作ることができるようになった。
パン生地についても幅が広がった。ご近所の糖尿病の傾向があるお客様の依頼で試作した玄米生地、通販のスペシャルセットを企画する中で作られだしたカンパーニュ生地などオニパンの質を深めるパンも生まれた。

左の写真はスペシャルセットの試作品。
この中には、現在のオニパンの到達点的なパンを選りすぐり詰合せている。
これが5周年の記念的な作品か。

④オニパンカフェを支えてくれたスタッフのこと。

折々帳に、以前何度かスタッフのことを書いた。
何人くらいオニパンカフェを手伝ってくれたか、数を数えてみた。驚いた。その数は30人を超えていた。この5年間で30数人がオニパンカフェに関わって、いろいろな形で支えてくれたわけだ。このお手伝いさんのおかげで、何とか続けることができた。本当にありがたい。感謝感謝だ。
5年目にしてオニパンカフェもお手伝いという形では経営できそうもない状況に入ってきた。
何せ、年からくる疲労、そして広がりつつあるお客様。量と質の変化に対応して、もっと本格的な仕事ができる体制が必要となってきた。小さなお店ではあるが、従業員さんを雇わなければ回らない!
しかし、こんなハードな仕事をやってくれる人はいるのだろうか。私たちにとって、その不安はなかなか拭えなかった。数時間のパートさんなら何とか働き続けることはできるだろう。しかし、従業員さんとなると、朝は早いし労働時間も長い。立ち仕事は、ほんと辛いものがある。下手をすると仕事をスタートさせて10時間立ちっぱなし、休みなく働くこともある。そこで休憩(昼食)して、さらに終業までまた働くみたいな。これを続けると、1週間で腰や足に異変が起こる。寝ていて足がつることもある。それを乗り越えないとパン職人にはなれない。
このきつい仕事を続けるためには、強いパンへの情熱、黙々と仕事ができる忍耐力、そして体力。この3つの要素が必要となる。あるいは、もう逃げられない、背水の陣的な状況があるとか。または、「絶対お店を持ってやる!」みたいな強力な夢とか。
とにかく、パン職人になりたいなあとか、軽い思いだけでは続けられない。

就業規則に3か月の試行期間を設けている。3か月の勤務状況を見て、正式に採用するかどうかを見極めるというわけだ。そうしないと、雇う側も、雇われる側も、困ったことになる。
私とママは、3か月の試行期間の設定はとても大切だと考えた。それを乗り越えた人は、きっと立派なパン職人となると思った。

オニパンカフェ5周年の財産として生まれたのが、従業員さんと思う。
この6月より正社員さんとして、石井宏枝さんが働いている。
厳しい~3か月を乗り越え、ほぼ、私の片腕として朝早くからパン作りそしてカフェの手伝いもこなしている。
彼女のパンへの情熱は相当なものである。通ってきたパン教室の数を聞くだけでも、すごいものがある。将来はパン屋開業を目指している。やはりそうでなければ、続けられないとも思う。いつかは独り立ち、これが人間の当然の欲求だ。「教育とは独り立ちするためにある」とはよく言われたこと。宏ちゃん、独り立ちするために頑張って!
私の場合は、独り立ちできなくなってきているのだが・・・。


宏ちゃんは津久見市出身です。教員免許も中学校・高校と持っています。
学校関係からパン屋へと大きな転身。几帳面な性格なので、パンの成形もきれいです。デニッシュは全て宏ちゃんがつくっています。
ちなみに背景のバタールは宏ちゃん作。

⑤チラシに書かれたデザイナーさん(すが原さと子さん)の言葉から

オニパンのスペシャルセット(通販)を作ってみようとの発想から、知り合いのつてで、大分市のデザイナーさんに相談を持ちかけた。デザイナーさんといっても、プロではなく、趣味でやっている感じの方。塚原高原観光協会のマップもこの方の仕事だ(とっても好評なのだ)。
私のいとこが、大分の「豆の力屋」で働いているのだが、なんとそこで週に何日か働いているとのこと。世間は狭いなあ。
会って相談したのが12月。ほぼ半年がかりで、じっくりと案を考えてくれた。
私は、なかなか原案を見せていただけないので、仕事をしてないのではと思っていた。
5月頃になって、案を持ってお店に来ていただいた。そこで私の浅い予見は見事はずれ、さと子さんの熱い思いを知り、驚き感嘆させられた。
私たちがお願いしていたことだけでなく、オニパンのマスコットキャラクターまで考えてくれていた。ノート1冊にさまざまな試行錯誤の跡が記されていた。
オニパンのチラシを作る作業は、先ずオニパンがどういうパンであり、どういう思いでオニパンカフェを運営しているのか、マスターとママの思いを知らなくっちゃあ、ということで折々帳をすべて読みじっくりと考えてくれていた。私はさと子さんの話を聞いていて、「なんとピュア~な人だ!!」と感動した。人間的で誠実な人だからこそ、こんなチラシがつくれるのだ!デザイナーとは、ただ見た目や美しさだけでなく、商品の本質をどう伝えるかというところで腕が試されるのだと初めて知った。

「パンの数だけ笑顔がふえますように。」
という言葉がチラシの中にある。

この言葉をママがとても気に入っている。
いろいろな事情で元気をなくしている大阪時代の友人にパンを送った。すると、その友人はとてもうれしかったらしく、ママに喜びの声と同時に通販のセットを注文してきた。その送り先は別の友人だった。その友人もまた、親の介護のことやらで苦労しているとのこと。パンに人の思いがこもり、「パンが人と人をつなぐ」(ママの言葉)。これって、「パンの数だけ笑顔がふえますように」ということだわ。
さと子さんの最後の一行に、すべてが集約されていると気づかされる。

オニパン5周年で気づいたこと。パンが人と人をつなぎ、笑顔がふえていく、そんなパン作り、そんなパン屋を目指さなくっちゃあってこと。

いろいろとわかってきた5周年。まだまだ、がんばらなくては。

今後とも、オニパンカフェをよろしくお願いしますね。