最後の日?

2月16日。「え~、ほんと~!?」私が買い物から帰ると、ママがこんなことを言うのである。「ドンな、飼い主見つかってん。今日でも引き取ろうかって言ってはったんやけど、マスターが淋しがるって言ったら、明日迎えに来るって言って、帰りはった。」何か、私はへナ~って気抜けしたような感じで、ママの話の続きを聞いた。「ドンは、9歳だって。やっぱり猟犬やった。飼い主さんが言うには、猟犬っていうより、競技犬だって。猟の技術を競う競技によく出てたって。」飼い主さんは、ドンを色々な大会に出したらしいが、ドンの能力と資質は相当のものだったらしい。何せ、九州大会で春夏連覇という栄誉に輝いたたとのこと。そして全国大会に出て、4位(レザーブ)を獲得したそうだ。現在の風采は、どう見たってよれよれの雑巾まがいの姿態ではあるが、ふとした瞬間に垣間見える、なんとも「キリッ」っとした姿や「凛」とした気配は、やはりそれ相当の過去を秘めていた証だったわけだ。
まる一カ月。何とかドンのお世話をしてきた。力もかなりよみがえり、リードを弾く力も手ごたえを感じる。「待て」や「ハウス」も覚えた。私やママがドンに近付くと、ドンは私たちを見て「ニヤッ」と笑う。 嬉しい表現を顔でする犬なんていたかなあ~。ドンは口を開き、歯を見せる。顔面が半分マヒしているので、顔がニヤッと歪む。尻尾も合わせて元気良くふる。本当に良くできた、賢い犬である。
(いなくなってもいいよ~)と半分思いながら、休みの日には、リードを首輪から離し、自由に散歩させる。ところが、どんなに遠くで離しても、1時間もすれば帰って来る。朝と夜の一定の時刻になると、ちょっとねだるように「ウオン、ウオン」と低い声で吠えだす。散歩をせがんでいるのを知ったのは、うちに迷い込んで来て2週間ほどたったころから。オニパン家の犬生活のルールをもう理解しているのだ。一事が万事、呑み込みが早い!なんでこんな賢い犬が、迷子になったんだろうなあ。

2月17日。今日はドンと最後の日。お別れ遠足ならぬ、お別れ散歩にママとドンとコーちゃんで出かけた。場所はすぐ近くのいつもの草原。そこで記念写真をパチリ。

コーちゃんも、ドンちゃんに慣れて、恐がらなくなりました。でも、ドンちゃんのすごさには、一目も二目も置いているので、決して私たちにとるようなえらそうな態度はとりません。

散歩から帰ると、飼い主さんから電話がかかってきた。「今日のお昼に行きます。」とのこと。私は、(いよいよなんだなあ)と実感。ドンのことをひとしきり聞いた。名前は「ゼファー」待ては「ウオー」と言っていた・・・・・・。様々に話を聞かせていただくうちに、飼い主さんは「もし…よろしかったら…・引き取りますか?」と突然、こんなことを言うのである。私はすぐさま「ええ、引き取らせていただきます!」と返した。事の顛末はあまりにもあっけない。

ドンちゃんは、そういうことで、我がオニパンカフェの犬になったのである。
コウちゃんには悪いけど、ママは「ドンちゃんは、オニパンの看板犬になる!」と嬉しそうに言う。
ドンちゃんは、以前、2頭も小さい猪を捕まえて来たとのこと。そんな風に猟としての相手には容赦しないのだが、人間にはめっちゃ優しい。何をされても我慢している。このブログを読んでいるお客様で、ドンちゃんを一目見ようとくる方も出てきている。すでに、看板犬になっているのかな。
ついでながら書き足すと、ドンの飼い主さんが見つかったのは、前回のブログを読んだ別府のIさんが、心当たりのある知り合いの方に尋ねて、そのおかげでもある。
ありがとうございます。この場を借りて、お礼を申し上げます。もうホームレス犬なんて言わせないぞ!(あれっ、言ってたのは私だっけか)