酵母生活2

この折々帳で、今一番書きたいことは、オニパン酵母のことです。しかし、はかばかしい成果を上げられず、月日が流れてきました。今、パン屋として私の意識の中で一番重要な位置を占めているのは、酵母のこと。何度も実験を繰り返しながら、酵母の違いで、味、香り、焼き色、生地の食感、口どけ感などが全く変わって来ます。特に食パンなどのお食事パンは、ご飯同様何も入っていないから、その違いが良く分かるのです。
おいしいお米は、それだけを食べてても、十分満足がいくものです。食パンでこそ、パンは勝負するものと以前より思ってきました。
今、オニパン酵母は、第2段階を模索中です。第一段階はクリアしたと思い、商品としてカウンターに並べています。お客様からは、「普通においしいよ」と言っていただけていますし、私としてもおいしいと思うので、出しています。しかし、このオニパン酵母で、食パンは焼きません。今日の朝食は、オニパン酵母の食パンとあこ酵母の食パンを食べ比べました。香り、味、食感どれをとっても、あこ酵母にはかないませんでした。
酵母以外全て同じ条件で食パンをつくります。オニパン酵母も、それなりに、発酵力、味等良くなっています。しかし、繊細な部分では大きく違います。
私はこれまで、パン生地の味を良くする力は、酵母の活動によって、小麦粉のでんぷんやたんぱく質が分解・消化されアルコール発酵される中で生み出されるうまみ成分が中心をなすものだと思ってきました。パンの解説書には、たいがいそう書かれています。そして、それはパン業界の常識として通っています。
しかし、それだけではないと、最近は考えています。パン生地を仕込む際に、あこ酵母のなま種を毎日味見しています。うまい!のです。それは、少し甘酒に似たような、少し酸味があり、シュパっと舌を刺激する味覚。コップに入れて、ちびちび飲みたくなってくるような・・・・。これは、この2年間毎日舐めているので、アル中のような状態になっているのかもしれません。毎日舐める中で、飽きずに、ますますおいしいと感じられるようになってきました。そんな成分があこ酵母の中に含まれているのです。

私は、今、一つの仮説にたどり着いています。

あこ酵母によって、つくられるパンのうまみは、麹の力だということ。
イーストそのものには、全く旨いと感じられるような味はありません。むしろ、イースト臭が鼻をつきます。イーストは、パン生地の発酵過程の中でつくられるうまみ成分にその味と香りを頼っていると言えます。
日本は、古来より、他の国にはない独自の発酵文化を持っています。発酵食品の宝庫とも言える食文化。その中でも、お味噌、醤油、酒などは、麹によって作り出されています。日本人は、このような発酵食品を体に取り入れ、体を作り上げてきた歴史を持ち、麹を使った食品を体が受け入れる要素が多分に大きいのでは。

ちょっと、むずかしいお話になりました。しかし、だれもこんなお話を聞いてくれませんので、ネット上で、興味のある方にお話をしています。さらにこの話は続きます。